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フィリップモーリスと銀座の天ぷら屋の相関性についての考察

先日、所用があって銀座を訪れる機会があった。

三越や松屋などの高級デパート、驚くほど高級な寿司屋、それに華やかな夜のお店。

昔は本やテレビで見て、何となく大人だけが出入りする洗練された特別な街だと認識していたが、大人になって来てみると案外そうでもないなと思った。

今では渋谷でも新宿でも表参道でも、東京の大きな街であればどこであっても華やかな空気が流れている。再開発が進んだ結果、じめじめした裏路地や雑多な区域は整理され、どこもかしこも近代的な清潔感に溢れている。

まるで、P&Gの除菌剤を含んだ白いペーパーで机の上の汚れを拭き取った後のように、街は真っ白な清潔感に溢れ、そこからしらに設置された防犯カメラで監視されている。一見安全で快適そうに見えるが、どうしようもなく病的な感じもする。

銀座がかろうじて東京の他の街と違うのは、真っ白な清潔感ではなく、ややセピア色がかった空気のようなものが街のメインストリートを外れた路地に流れており、たまに細い通りを歩くと、昭和の頃から取り残されたような飲食店が軒を並べていて、昔そこで食事をしていた人たちの面影がまだほんの僅かに残っているところくらいだ。

ほんの少し昔、昭和の頃にその辺りの飲食店で酒を飲んだりカレーライスを食べていた人たちは、今とは違って当たり前に店内で葉巻タバコを吹かしていたけど、今ではどこの店も禁煙が多い。

だからもしも昭和のサラリーマンがタイムスリップして現代の銀座にやってきたら、一番驚くのは飲食店でタバコが吸えないことと、街に吸殻が落ちていないことではないだろうか。

🚬 🚬 🚬

用事が済んだので、何か食べようかと思って街をぶらぶらしていると、フィリップモーリスの電子タバコであるアイコスのショップを見かけた。随分と人が入っている。中に入ってみると、日本人以上にアジア系の外国人が多い。みんなお土産に持って帰るのだろうか。

フィリピンやインドネシアなどの新興国では、現在タバコの需要が伸びているという。平均所得が向上するにつれ、嗜好品の需要が高まっているのだろう。一方、先進国では葉巻タバコの需要が落ち込んできている。

しかし、タバコメーカーは先進国での葉巻タバコの需要減少を電子タバコの需要増加につなげようと今必死で競争をしている。最近自分の身の回りでもアイコスを筆頭とした電子タバコを嗜んでいる人が増えている。

電子タバコはタバコの有害成分であるタールをかなりの割合で除去出来るので、健康面も配慮しているということだが、さてどうか。

そんなことを考えながら歩いていると、まだ店を開けている天ぷら屋を発見した。用事が長引いたせいで時刻はすでに夕刻に近く、飲食店のほとんどが夜の営業の準備をするため閉まっていたので助かった。迷わず、その店に入ってみた。

店内は、いつも自分が住んでいる街で行く蕎麦屋兼天ぷら屋とは違い店内は清潔で、白い素地に木目が浮き上がって綺麗なテーブル席がちょうど良い間隔で並んでおり、足元には路地に漂っているセピア色が少しにじんでいた。

1500円くらいの天ぷら定食を頼み、ビールの中瓶を頼む。蒸すような暑さの中歩いてきたので、立て続けにビールを小さなコップに注いで喉に流し込む。冷えたビールの苦みと炭酸の刺激が、体の疲れを癒してくれる。

「バドワイザーはありますか?」

「申し訳ありません、当店にはバドワイザーは置いてないんですよ。外国のおビールですよね?うちは昔からキリンとアサヒだけですの」

試しに聞いてみたが、上品な年配の女性店員さんが、そんなものは銀座の天ぷら屋にはおいていないのが常識だとやんわりと教えてくれた。確かに、バドワイザーは少し味が薄すぎるので天ぷらには合わないだろうなと思う。

しばらくすると天ぷらが出てきた。海老の天ぷらだった。薄い飴色の衣で、見ただけでサックリとした歯ごたえを口の中に感じた。箸で取って食べて見ると驚くほど香ばしく、そして予測通りサックリとしていた。中身の海老も身に弾力があり、うっすらとした甘味が口の中に広がった。

天ぷらってこんなにうまいのか?

次に出てきた水茄子も、白身魚も、全てサックリとした衣に高温で揚げられた新鮮な素材が包まれていて、文句なしに旨かった。いつも上等なものを食ってないからかもしれないが、こんな旨い天ぷらを食ったことはなかった。

それにしても何故だろうか。値段は1,500円だというのに、同じような値段で天ぷら定食を出している自分が住む街の店とはまるで味が別次元だ。

瓶に残っていたビールをゆっくりと飲みながら考えた。そしてこうではないかと思った。

この店は周りの飲食店のレベルが高く、高品質かつリーズナブルなものを出さないと商売にならない。しかし、一方で自分が住む街の蕎麦屋兼天ぷら屋は他に競争相手がいないので、冷凍もののブラックタイガーをべチョベチョの衣で包んだものを出していても店は潰れない。

この店はIBMのようにAmazonやMicrosoftoといった優秀な競争相手、つまり新規出店してくる新進気鋭の店主が経営するような店や、老舗の飲食店といった競争相手と激しい競争を繰り広げている。

一方で、自分が住む街の蕎麦屋兼天ぷら屋は他に競合相手がいないのでそこまで頑張らなくてもある程度儲かるし、潰れることは決してない。新商品や新メニューを開発する必要などなく、延々と歯ごたえの悪いブラックタイガーの天ぷらを出していれば食っていけるのだ。

🐟 🐟 🐟

会計を済ませてから外に出ると、さっきのアイコスの店が気になりもう一度前を通ってみる。やはり店は盛況で、さっきと同じようにアジア系の外国人で賑わっている。

それを見て、最近フィリップモーリスの株価が下落し配当利回りが5%超となっていることを思い出した。そしてアメリカのタバコ会社であるアルトリアグループも日本のJTも株価が暴落していることを思い出した。

そして地面を見てみた。どこにも吸殻は落ちていない。しかしアイコスを買って帰るあの人たちの国にはまだ吸殻がたくさん落ちているかもしれない。昭和の時代に日本の路上に投げ捨てられていた吸殻は、昭和の時代の日本を迎えるアジアの国々の路上に転がっているのかもしれない。

しばらく歩いていると、一本だけタバコの吸い殻を発見した。フィルターに口紅の跡がある。出勤前のホステスか外国人の女性が捨てたのかな。勝手にそんなことを思い、その吸殻をよく見てる。自分の目に狂いがなければ、その吸殻の原型は昭和の時代から姿を変えてはいない。

パソコンは驚くほど薄くて小さく、そして安くなったし、携帯電話はスマホに変化した。IBMやMicrosoftoやAppleはずっと競争を繰り広げ、莫大な開発費を使って新製品を作り続けてきた。

だけど、顧客であるユーザーたちは、もっと便利なものを、もっと安価な価格で、とひたすら求めてくる。一段階便利になっても麻薬と同じでしばらくすれば、もっともっととその先を求めてしまうのだ。

さっきの天ぷら屋が置かれている環境と似ている。ふとそう思った。銀座の飲食店のレベルが総じて高いのは、他の店との競争が常に存在しているからだ。競争があれば当然品質は上がっていく。

だけどタバコメーカーは昭和の時代からずっと同じようなものを同じような設備を使って延々作り続けているのだ。色々な本やブログに書いてあるように、競争相手などごく少数に限られている。だから自分の街の店と同じで、普通に商売をやっていればある程度は儲かるのだ。

最近電子タバコが普及してきて、やっと競争気配のようなものが漂ってきたが、突き詰めてみると中身は同じだ。単に客にニコチンとタールを摂取させるための装置を販売しているだけなのだ。だからこれから先、タバコ大手数社のうち一社だけが環境が激減して経営危機に陥るということは考えにくいだろう。

銀座で天ぷらを食べてそんなことを思った。

🚬 🚬 🚬

直近で暴落しているタバコ銘柄だが、寡占企業であることと配当利回りがいいので最近欲しくなってきた。買うのであれば、JTかアルトリアグループがいいような気がするが、果たしてどうなのか。

昭和の時代、兜町で株の取引をしていた人たちも、銀座を歩いたあとに銘柄のことを考えたりしていたのだろうか。

間違いないのは、その頃は大体の大人がタバコを吸っていて、吸ったあとのタバコは何の迷いもなくその辺りに投げ捨てられていたということだ。

そして、それがその頃の常識だったのだ。

街にはまだ除菌されていない空気が流れていて、今裏路地に流れているセピア色に色あせてしまった空気も、その頃はまだはっきりとした色彩に彩られていて、そして人々の気持ちにはどこか余裕があった。

それが、昭和という時代だったのだ。

その頃おいらまだハイハイしてましたが!!!

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