あんないい人がまさか...
「今日はありがとうございました、課長!!」
「いえいえ、気にしなくていいんです、誰でも失敗はするものですから」
人格者の米国株太郎課長は、部下が失敗をやらかしたこの日も一緒に得意先に謝りに行き、相手先の担当者にひたすら頭を下げ、何とか事なきを得た。
そして、失敗をした部下をきつく叱るのではなく、優しく励ますようにして失敗の原因を一緒に考え、改善策を二人で構築した。
「僕も、課長みたいになりたい」
失敗をやらかした部下がそう思うほど、米国株太郎課長は人にやさしく、仕事が出来て、本当に素晴らしい人間だった。
「私も米国株太郎さんと一緒に働きたいわ」
別の課の社員もそう言うほど、米国株太郎課長はみんなから好かれていて、また、尊敬もされていた。
「今日は疲れたな...」
そんな米国株太郎課長だったが、さすがに今日のハードクレームには疲れたようで、家に帰るとベッドに倒れ込んだ。
「ふう...」
深いため息をついたあと、米国株太郎課長がスマホを手にした。
次の瞬間だった。
いつもは、常に笑顔を絶やさない穏やかな米国株太郎課長の顔に変化が起きた。
「さあて...」
「これから...」
ーSNSでもやりますかー
サイバーシリアルキラー
そう...会社では人格者の米国太郎課長は、自宅に帰るとSNSを駆使して有名アカウントに攻撃をしまくるサイバーシリアルキラーだったのだ。
実は、米国株太郎課長は全く人格者などではなく、部下をしばき回したいのだが昨今のハラスメント防止の風潮によりそれもできず、また、上司から営業成績のことで詰めらまくっていてストレスを貯めまくっていた。
「あっは、あっは、きもてぃいいいいいいい」
完全にサイバーシリアルキラーの本性をあらわにした米国株太郎課長は、スマホの画面を超高速でスワイプし、今日の攻撃対象を物色し始めた。
「あっは、あっは、これにてぃよおおおおおおおお」
今日のセレクトは、昨日も批判したあのアカウントだった。確認をすると、昨日の自分の批判コメントが「いいね」されている。
「おっは、おっは、ぼくてゅごいいいいいいいい」
承認欲求が満たされた快感で、米国株太郎課長の全身に稲妻のような衝撃が走った。
「ようてぃいいいい、ぽっくん、きょうもおおおお、やるおおおおおおお」
ーくたばれ・ぼけ・ころぬ・配当金しばく・うそつき・だぼ・かす・短小・あほ・くたばれ・ぼけ・ころぬ・配当金しばく・うそつき・だぼ・かす・あああああああああああああー
米国株太郎課長は、ひたすら攻撃コメントを繰り返し打ち続けていく。
「いくううううう、いぐううううううううううう!!」
いつもは満たされぬ心が、己が打ち込むワードによって満たされていく快感に、米国株太郎課長の興奮は最高潮に達していた。
と、おもむろに米国株太郎課長は股間の焼き芋を握りしめ、激しくスライドさせはじめた。
「ぼくわあああああああ、最高だああああああああああ!!」
「いぐうううううううううううう!!!」
...。
...。
目が覚めると、すでに時刻は朝5時だった。今日も会社に行かないといけない。
米国株太郎課長は、食事をしてスーツを着ると、洗面台の前に立ち、鏡の中の自分に向かってこう言った。
「さ、今日もいい人やりますか♡」
政府がSNSを規制する方向に動いている
こいつ誰だよ!?
そう思った人もいるだろうが、これはSNSをやった場合の俺の姿だ。
そう、孤独な中年である俺が仮にSNSを本気でやり出したなら、恐らくはこんな感じで昼はとってもよい人、夜は...SNS中毒者といった感じになるだろう。
俺は、自分に危険なSNS中毒者となる素質があるのを知っているので、SNSにはまだ手を出さないでいる。
人間という生き物は、普段の生活で精神が満たされていないと、どこかでバランスを取る必要があるのだが、手軽なSNSは匿名で始めることができるため、精神のアンバランスさを解消するために自己承認欲求を満たしたり不満を吐き出すのに打ってつけの装置なので、「いい人」の仮面の下に隠れたサイバーシリアルキラーを覚醒させてしまう可能性が極めて高い。
なので、不平不満が蔓延している現代日本社会においては、誰でもSNSをやると上記で書いたようなグロテスクなピエロになってしまう可能性があるのだ。
「人の悪口は言っちゃダメですよ」
小学校1年生で教えられる道徳の基礎を忘れて多くの人がSNSでの批判に夢中になるのは、そんな理由があるからだ。
そう考えると、SNS上での批判や中傷は、もしかしたらそのアカウントに対して向けられたものではなく、発信者自身の心から発せられている悲鳴なのかもしれない。
SNSの危険なところは、連鎖反応が起こることで意思が巨大化するところで、先日、なんと東京高検検事長の任期延長がSNSによる反対運動をきっかけに国会での成立が断念された。
それ自体は正当な主張だし、任期延長が成立しなかったことは正当な判断だと思うのだが、俺が思うに、これをキッカケにして国がネット規制に本気で乗り出すのではないかと懸念している。
有名人の方が誹謗中傷を受けて自殺した可能性があることを政府の高官が問題視するような発言をしていたが、恐らくは東京高検検事長の任期延長に関する一連のSNS運動を見た政治家たちが、「これはヤバい」と判断してSNSやネットの規制に乗り出すキッカケにしようとしているように思う。
誹謗中傷による名誉棄損等を防止するのが主題となっているが、本当の目的は恐らく別のところにあると考える方が自然だろう。
俺が政治家なら、間違いなくSNSやネットを規制する方向に動くし、実際に自分たちにとって不都合なものを放置するほど政治家たちもバカではないだろう。
俺は、インターネットの自由さが好きだし、過激な表現とかもまあ、別にいいんじゃないかなと思う派だったのだが、SNSが普及しはじめてから、明らかに何かタガが外れてしまった感じがしていて、このままでは自由なインターネットが自由ではなくなるのではないか?と懸念している。
YouTubeにしてもそうなのだが、やはりメディアやプラットフォームが巨大化すると浄化作業が進められてしまい、表現に制限が出てしまう。
個人的には、昔のユーチューバーの素人感満載でメチャクチャな感じが好きだったのだが、最近は明らかに規制が進んでNHK化の方向に動いている。
ネット全体がそんな感じになってしまったら、まあ、つまらないよな...。
古い感覚かもしれないが、インターネットはリアルを補完するアンダーグラウンド的なものであった方が面白いと思うのだが、まあ、こんだけ普及したら次は規制に進んでしまうわな...。
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