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【衝撃】あり得ない場所であり得ない光景を見てしまった私の末路

戸惑い

ー嘘だろー

僕は、その光景を見た瞬間、あまりの衝撃に声を失ってしまった。

人生には、自分が予測し得ない問題や、どうしようもない出来事、受け入れがたい事実など、自分自身ではコントロール不可能なことも多い。

しかし、その時見たその光景は、もはやそういった次元を超えていて、僕はあまりにも大きな衝撃を受けてしまったせいで、自然と目から溢れ出す涙を止めることが出来ず、ただただその場に立ち尽くしていた。

ーいったい、どうしてこんなことに?ー

頭の中でグルグルと何かが回転し、脳が正常に作動しない。船酔いのような気持ち悪さが胸の奥に広がってきて、すぐにでもその場を立ち去りたかったが、足が動かない。

ーいったいどうしてこんなことに?ー

同じ言葉が頭の中でグルグルと回り、僕は眩暈を覚えていた。

変わるものと変わらないもの

「地元は久しぶりだな」

会社の都合によって地元で勤務することになった僕は、久しぶりに帰ってきた町をゆっくりと歩いていた。

自分が生まれ育った町に大人になってから帰ってきて、そのころとは違った感覚で町の風景や匂いを感じるのは、何となく変な感じがする。

当然のことながら、僕が学生だった頃と比べて、町はずいぶんと様変わりをしている。

以前までは何もなかった空き地にコンビニエンスストアができていたり、公園があった場所に建物が建っていたり。

町の風景はずいぶんと変わってしまったが、僕の記憶の中にある町は、いつだってあのころのままだ。

「俺さ、いつかは自分で会社を作って、世の中を変えてみたいんだ」

昔、公園があった場所を通ると、あの頃の僕と彼の会話が耳の奥に聞こえてくる。

彼のまっすぐな瞳を見ていると、僕はいつも背筋がピンっと伸びて、なんだか自分もきちんと将来のことを考えないといけないような気分になったものだ。

彼は、僕と同い年であるにも関わらず、自分自身の将来に対して大きなビジョンを描いていて、僕は友人である彼の話に強い刺激を受けていた。

「かぶまくら、いいか、この世の中にはチェレンジする人間と、現状に甘んじる人間が存在していて、この世の中を変えるのはごく少数のチャレンジする側の人間なんだ」

「ふーん...」

「そして、大多数のチャレンジしない人間たちは、安定だけを求め、自分からは全く動こうともせず必死に現状にしがみつくんだ。実は、その安定は砂上の楼閣であるということにも気付かずにね」

学校の帰りに公園に立ち寄ると、彼はいつも情熱的に僕にそんな話をしてくれた。

僕はといえば、彼の思考があまりにも未来を見すぎていて、時折話の内容を理解できなかったが、そこから発する「熱」のようなものを肌に感じていた。

正直、彼は僕にとって眩しすぎる存在だった。

スティーブ・ジョブズと自分の違い

「まったく、頼みますよ」

「はい、申し訳ございませんでした」

朝から顧客のところに呼び出され、クレーム対応をしてようやく解放されると、すでに時刻は昼を過ぎていて、道路の街路樹に張り付いた蝉たちが鳴く音が鳴り響いていた。

サラリーマンという職業は因果なもので、必死で働いて出世したとしても、今度は部下の面倒をみたり、気を遣う仕事を任されたりで、結局ストレスから解放されることはない。

そして、いくら頑張ったとしても、サラリーマンである僕がこの世の何かを変えることなんてあり得ない。

「俺はさ、絶対にこの世の中を変えてみせる。安定なんかクソくらえなんだよ、とことんまでチャレンジをして、スティーブ・ジョブズを超えるような存在になってやるんだ」

情熱と野心がむき出しだった、彼の言葉が急に脳裏によみがえる。

スティーブ・ジョブズは、アップルコンピューターで革命的なイノベーションを起こし、アイフォンで世の中の構造自体を変えてしまった。

ジョブズはもう死んでしまったけれど、マックやアイフォンは残っていて、彼のスピリットが宿ったアップル製品は今後も世の中に多くのインパクトを与え続けるだろう。

一方で、僕はサラリーマンとして必死で走り回る毎日を生き、結局は何もこの世の中に残すことはできないだろう。

「きっと、あいつは今頃、スティーブ・ジョブズになるために頑張ってるんだろうな」

空を見上げると、真っ青な平面の向こうに雲が浮いていて、ゆっくりと動いている。

それは、いつか彼と一緒に公園で見上げた空に浮かんでいた雲と、同じ形をしていた。

脱皮

ある日、個人的な用事で町にある市役所を訪れてみると、人でいっぱいだった。

いつも不思議に思うのだが、なぜ市役所はいつ来ても人がいっぱいなのだろうか?

多分だが、市役所という場所は「安定」という概念がしみ込んだ空間の代表格みたいなもので、そこでは昔から引き継がれてきた作業や風習みたいなものがずっと残っていて、効率化という変化を拒み続けているからではないだろうか。

そして、人々も当然のことのようにそれを受け入れていて、整理券をもって長い時間を待つことを当たり前だと思ってしまうのだ。

「やれやれ、待たされそうだな...」

そうため息をつき、整理券をとるために発券機へと向かう。

「そんなに長くいれないんだけどな」

愚痴るようにそうこぼしたときだった。

信じられない光景が目に飛び込んできた。

「...嘘だろ?」

あまりにも信じがたい光景だったので、僕は自分の目を疑ってしまった。

ー嘘だろ?-

しかし、その光景は確かに現実として目の前に広がっている。

ー嘘だろ?-

何度も心の中でそう言ってみるのだが、それは確かに現実として目の前に広がっている光景なのだ。

あまりの衝撃に、心臓がドクン、ドクン、と激しく音を立て、体が震えてきた。

「嘘だろ...なあ...」

目から自然と溢れ出てくる涙をコントロールすることすら出来ない。

それほどの衝撃が、僕の心を襲っていた。

「かぶまくら、オラ、絶対にこの世界を変えてみせるぜ。スティーブジョブズですら到達できなかった領域に、オラは到達するんだ!!だから、かぶまくら、お前も絶対に安定にしがみつく人間なんかじゃなく、チャレンジする人間であってくれよな!!」

ー嘘であってくれー

「オラ、いつの日か自分が作り出した製品やサービスが、この世の中に衝撃を与えるような気がするんだ!!だから、かぶまくら、お前も安定なんかにしがみつかず、自分自身の夢を持って突き進んでくれよな!!」

あんた、そう言ったやん...そう言って、俺を、俺を真っすぐな目で見てたやん...。

それなのに...。

それなのに、どうして...。

ー市役所に就職してんだよー

きっとこれは悪い夢に違いない。そう自分に言い聞かせ、目をこすってみる。

だけど、それはやはり現実だった。

あの頃...スティーブ・ジョブズを超えると力強く言っていた友人は、やはり、やはり...。

ー市役所に就職していたー

髪の毛は白髪が混じり、頭は禿散らかしてしまっているが、それは間違いなく「スティーブ・ジョブズを超える」と僕に宣言していた彼だった。

その光景を見て、僕はその場にいることができず、目的の書類を手にしていないまま市役所を出た。

とても、その場にいることが出来なかったのだ。

「どうして...、どうして?」

彼のあまりの変化を受け入れることが出来ず、僕はしばらくの間立ち尽くしてそう呟いていた。

市役所の外は相変わらず夏の日差しが射していて、蝉の鳴き声が遠くの方から鳴り響いている。

ふと、足元を見ると、薄いエメラルドグリーンの膜を身にまとった蝉の幼虫が、ゆっくりと歩いている。

ーそうか、彼は脱皮したんだー

それを見た瞬間、僕はようやくさっき見た光景を受け入れることができた。

彼はおそらく、自分はこの激しい競争が渦巻く資本主義社会の中では非力な存在であることを認識し、夢を見る幼き幼虫から、現実を真っすぐ見つめる成虫へと脱皮したのだ。

だから、最も安定した市役所という職場に就職をしたのだ。

住宅ローンに教育費、それから自動車ローンにその他諸々。

生きるためには安定的にお金を稼ぐ必要がある。スティーブジョブズを目指していたんじゃ、そんなものは背負いきれない。

「だから、彼は脱皮したんだ」

そう理解した瞬間、僕は急に彼のことが愛おしくなり、市役所のドアをあけると彼の元へと走っていった。

そして、こう言った。

「待たせんなコラあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ーおわりー

※本記事に登場する人物たちは、特定の作品、キャラクターなどとは全く関係はありません。

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