どこまでも続くお花畑。
遠くに見える眩い光。
ここは一体どこだろう?
ああ、そうだ、おいらはもう死んでしまったんだ。
65歳を迎え、ついに訪れた退職のその日、みんなに送別会を開いてもらい、ほろ酔い気分で家路についていた途中、急に胸が痛くなってそのまま意識を失ってしまった。
そして気が付くと魂は肉体を離れてしまい、おいらは短い生を終えた。
嫁もいない、子供もいない、ミミちゃんには振られる。
...。
どこまでも虚しい人生だった。
だけど、そんなことを悔いていてもしょうがない。これからおいらは裁きの門に行き、天国へ行くのか、それとも地獄へ落とされるのかの裁きを受けないといけない。
もはや死んでしまった今は、そちらの方が重要だ。
そう思ってお花畑を歩いていると、なんとなく、何かが頭の中で引っかかっていることに気が付く。
おいらは何かを忘れている。
一体何を忘れているんだろう?
一体、何を...。
!?
確定拠出年金を1円も引き出していなかった!!!!
🌻 🌻 🌻
先日、厚生労働省が確定拠出年金の納付期間を、現行の60歳から65歳まで引き延ばすことを検討しているというニュースが少し話題になっていた。
確定拠出年金とは、分かりやすく言えば、個人が自分で払った掛け金で運用を行うことで資産を増やし、老後の年金を用意する制度のことだ。
これと真逆の制度が確定給付年金で、拠出金の額には関係なく、一定額の年金を支払う制度のことだ。
ちなみに、確定拠出年金の運用責任は完全に個人に帰属し、確定給付年金の運用責任は企業に帰属する。
つまり、確定拠出年金制度においては、運用するのが拠出金を掛けている個人なので、運用のやり方を失敗して損失を出してしまうと、その個人本人がモロに損失を被ることとなる。
しかし、確定給付年金の場合は、企業が責任をもって運用し、決まった額を個人に支払う制度なので、例え企業が運用に失敗したとしても、年金を受け取る側の個人は損失を被らない。
え?それだったら、絶対に確定給付年金の方がいいじゃないかって?
その通りだ。確定拠出年金よりも、確定給付年金の方が運用する手間もなく、必ず決まった額がもらえるので、企業に勤めるサラリーマンにとってはそっちの方が都合がいいに決まっている。
実は、ついひと昔前までは、日本の企業年金は、そのほぼ全てが確定給付年金だった。
しかし、日本企業の体力が徐々に細り、以前のように債券等で安定的な利益を得ることが難しい環境が進むにつれて、2001年頃に日本に導入された401K、つまり確定拠出年金制度が一気に広まっていった。
ただ、実は401Kが日本でスタートしたばかりの時期というのは、あまり好意的でない意見も多かった。
その頃は、401Kといえば、「大切な年金の原資を従業員に運用させて、損失を出させる悪の制度」的な印象を持っている人も結構多かったのだ。
政府は素人に博打をやらせようとしている!!
という風に雑誌に書かれていたこともあったと記憶している。
そして、まだ確定給付年金制度を続けている企業も結構あり、そういう企業で401Kの導入を提案したりすると、従業員に反対されるケースも多かったという。
これはあくまで私見なのだが、401Kが爆発的に広がりはじめたのは、リーマンショックで相場環境がメチャクチャになったことと、超低金利が継続したことが影響しているような気がする。
昔は結構な利率を誇っていた積立型の傷害保険や、定期預金、養老保険などは、格付けが高くて高利回りな債券がバンバン発行され、優良企業が高い利率で金を借りまくってくれる環境下で成り立っていた。
企業型の確定給付年金も同じで、安全で高利回りが見込める投資先が無数にあるという前提で成り立って制度だと思うのだが、その前提がリーマンショックを境に完全に崩壊してしまった。
なぜなら、運用環境は最強に悪くなり、運用益では足らない分を補填するほどの体力が企業から無くなり、その結果、確定給付年金制度を維持できなくなる企業が爆発的に増えてしまったからだ。
だから、企業も一定の掛け金は出すが、運用結果に対する責任は一切負わないという確定拠出年金制度を導入する企業が増えていったと思うのだ。
🌻 🌻 🌻
最近、個人型401KのiDeCoが結構人気があるようだ。
確定拠出年金制度を導入していない会社の従業員や、個人事業主を中心に加入する人が増えていると聞く。
そして、企業型の確定拠出年金も、導入している企業が増えたせいか、もはや自分で年金を運用するのは結構当たり前になっているような感じもする。
昔は従業員には歓迎されなかった401Kが、最近では意外にも人気者になっていたのだ。
これは、スマホの普及により、誰もがいつでも手軽に金融に関する情報や、税金に関する情報を手に入れられる環境が整ったことにより、401Kのメリットが理解され始めたからだと思う。
★ ★ ★
確定拠出年金のメリットは、なんといってもその税制優遇にある。
まず、確定拠出年金制度では、投資信託などの運用益に対して課税がされない。つまり、非課税なので、もうけた部分をそのまんま受け取れるのだ。
これは、金額が大きくなればなるほどメリットが大きくなる。
例えば1000万円の利益だと、通常であれば支払わなければならない税金である約200万円を支払わなくてもよくなる。
確定拠出年金は超長期運用前提の制度なので、このメリットは非常に大きい。
また、掛け金については所得控除の対象となるので、所得に応じて支払う税金が減額されることになる。
さらに、受け取り時にも税制上の優遇を受けることが出来る。
★ ★ ★
この通り、税制上面のメリットは非常に大きい確定拠出年金制度なのだが、一つメチャクチャ大きなデメリットがある。
それが、60歳になるまでその運用益を引き出せないというデメリットだ。
🌻 🌻 🌻
はっきり言って、いくら401Kで運用に成功し、結果として多額の年金が受け取れるとしても、その年金を使えなければ何の意味も無い。
日本における男性の平均年齢は、81歳くらいになるそうだ。
だから、平均的な日本人男性は、60歳で退職したら22年かけて、それまでしっかりと利益を積み重ねてきた確定拠出年金を取り崩せばいい。
しかしだ!!
中には結構短命な人間もいる。
もっと言うと、DNA的に男性が短命な家系の人は結構な数いるのだ。
それが、おいらなんだよ...。
例えば、おいらが60に退職して、62歳で死んでしまったと仮定すると、おいらは数十年間運用してきたお金をたったの2年で使わなければいけないことになる。
数百万円のお金なら使い切れるかもしれないが、色々な欲望も衰え、体力や物欲も失われはじめていく年齢になって大きなお金を手にいれても、もはや使い道があまりないだろう。
年を取れば食う量も減るし、酒も飲める量が減るだろう。
それに、以前友人を連れて行ったような店へも行かなくなっているだろうから、おいらの場合あまり金を使わなくなっているはずだ。
使うとしたら旅行くらいだろうが、それも年2~3回程度ならそこまでの出費にはならないだろう。
「今使える1万円と、将来使う1万円では価値が違う」
大学生のころ、そう言ってひたすらバイト代を浪費していた友人がいたが、確かにその通りだと思う。
これはあくまで自分の為に使う金に限った話だが、自分の為に金を使うのであれば、若ければ若いほど感性が豊かな場合が多いから、色々な面で有意義だ。
例えば同じ5,000円くらいの寿司を食ったとしても、20歳の時に食ったのと、30歳になってから食うのでは感動の度合が違うはずだ。※おいらは、そんないいもん食ってないが。
最近、コンビニで、うまい棒という1本20円くらいのお菓子を買って食ったときに思ったのだが、幼いころはうまい棒を食っただけで、「ああ、うめえ!!」と感動していたのだが、今ではただの安いスナック菓子にしか感じない。
年を重ねるほどに感性というのは衰えてくる傾向があるので、快楽や感動のために金を使うのであれば、やはり若いときに使ったほうが有意義なのではないだろうか。
いやいや、老後の生活費に使うのが普通でしょ、と思う方もいらっしゃるかもしれない。
だけどね...老後の生活を謳歌する前に、おいらがあの世に旅立っている可能性もあるんだよ。
...。
嫌じゃあああああああああああああああああああああああ!!!
と、叫んでも無駄なので、これは運を天に任せるしかない。
しかし、神はやはり残酷な側面をもっていらっしゃるようで、なんと厚生労働省が確定拠出年金の納付期間を現行の60歳までから、65歳までに引き上げることを検討しているというのだ。
65歳まで納付期間を引き上げたからと言って、引き出し期間まで65歳に引き上げるのかは不明だ。
しかし、そういう可能性も十分にあるだろう。
もしもそうなってしまった場合、65歳までに死亡すれば、びた一文年金を受け取ることなくあの世に旅立つこととなる。
それは...嫌だよね。
60歳までに死ぬ人はあまりいないだろうが、それ+5年だと死亡する人が増えるのは確実だ。
一説には、日本人が65歳になるまでに死亡する確率は10%程度だそうだ。だから、その10%に入ってしまった場合、確定拠出年金の引き出し年齢が65歳まで引き上げられてしまったら洒落にならない。
この確定拠出年金を引き出せる年齢の点については、メリットであると考える人と、おいらのようにデメリットであると考える人に分かれると思う。
それは、人それぞれだろう。
しかし、一応この引き出し期間のデメリットについては、加入する前にきちんと考えた方がいいかもしれない。
確定拠出年金で自分のお墓建てました!!Happyな人生でした!!
とか、マジで洒落にならん...。
金はやはり、使ってこそ意味のあるものだからね。
株で夢をかなえよう
清き1クリックをよろしくお願いいたします!