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高配当株・IBMが気になる

■永遠の不発弾

IBMが気になる、どうしても気になる。

気になって気になってもはや眠れない。だからブログを更新している。

IBMは本当に罪なやつだ。投資家のみんなに夢を見させては打ち砕く。かのマゼランファンドを運用していた伝説的ファンドマネジャーであるピーターリンチも今から約30年以上前にこう言っていた。

「永遠の不発弾」

そう、永久に着火することの無い弾薬。着火されなければ弾薬は発射されることはない。そしてIBMの株価もいつまでも上昇することは無い。だけど他のファンドも組み込んでいる銘柄なので、ファンドにIBMを組み込んでいて怒られるリスクよりも、IBMを組み込んでいなくて怒られるリスクのほうが大きい。30年前からそんな銘柄だったのだ。

しかし、最近IBMが開発した人工知能つまりAIであるワトソンが脚光浴びだして再び先進的なAT株として注目を集め始めていた。有名投資家のウォーレンバフェットが初めて投資したAT銘柄としても有名だったため、株価は上昇し、ついに弾薬は着火されたかに思えた。

だが、「永遠の不発弾」というコードネームは伊達ではなかった。

ウォーレンバフェット率いる投資会社であるバークシャーハサウェイがIBMに見切りをつけて2017年に一気に売り始めてしまった。理由は永久に売上高が回復しないからだ。IBMは約5年間売上高の減少に苦しんでいた。売上高が減るということは、基本的には分母が減り分子である利益が圧迫されることを意味する。

バフェットが言うには「IBMは結構な競争に巻き込まれている」らしい。

IBMのビジネスはソリューション、つまりITを使って企業の問題を解決していくという事業がメインだ。例えば金融機関や官公庁にはIBMのシステムが組み込まれていることが多いが、そのシステムは人間が行えば何十時間もかかる作業を数分で終わらせてくれたり、社内で迅速な情報共有することを可能にする。

しかし、このようなITビジネスは参入障壁が非常に低く、他のIT企業も大挙してそこに押し寄せている。

■クラウドコンピューティングの普及

おいらの考えでは、クラウドコンピューティングを使ったサービスの爆発的な普及がIBMの事業を圧迫しているように思う。クラウドコンピューティングというのは、顧客がシステムを持たずに様々なサービスを利用できる形態のサービスだ。

どういうことかと言うと、IBMは基本的にシステムを丸ごと企業や官公庁に売り込むことがメイン事業となっている。例えば従業員の勤怠を管理するシステムを直接とある企業に売り込んだとする。すると、その企業は自社のIT部門や子会社が管理するサーバーを使用してそのシステムを稼働させ、自社の従業員の出勤や退勤等を管理する。

この場合、企業は自社でサーバーを用意しなければならないし、一旦そのシステムを買ってしまえば新しいシステムに買い替えるまでずーっと使わなければいけない。そして買い替える場合も大体がIBM製となる。なぜなら従業員がそのシステムに慣れてしまっているからだ。

そうすると、二つの問題点が出てくる。

第一に金がかかる。オーダーメイドのシステムを買う時には何十億円(時には何百億円)という金がかかってしまう場合もある。また、自社でサーバー等も用意しなければならず、システムを管理する従業員も配置しないといけないのでその分の費用もかかる。

第二にそれだけ金がかかっているシステムなので頻繁に買い替えることなどできない。新しくて便利なものが出てきてもすぐに乗り換えることが出来ないのだ。

このような問題点を解決するのがクラウドコンピューティングだ。クラウドというのは雲という意味だが、イメージとしては雲の中に色々なシステムがあって、利用者はその雲にネット接続して好きなサービスを利用するという感じだ。

例えばある企業が勤怠管理のシステムを使用したいと考えてクラウドにアクセスしたとする。そしてお好みの勤怠管理システムを選んで使用してみたが、どうも自社には合わない。雲の中を探してみたところ、別のシステムがあったのでそちらを使用してみたらしっくりしたので使用することにした。

この場合メリットが二つある。

第一にシステムを丸ごと買うわけではないので金がかからない。クラウドを利用するためのサービス料を支払えば、企業は様々なサービスを利用することが出来る。

第二に様々なシステムを利用することが出来る。クラウドを運営する事業者と契約すれば好きなシステムを使え、自社に合わなければ使用をやめて別のシステムに乗り換えることが出来る。

こう考えると、どう考えてもクラウドサービスを使用する方が利用者にとってメリットがある。

そのため、IBMのシステムを丸ごと売るという事業自体の潜在的シェアがかなり失われていると考えられる。でなければ、あれだけの企業の売り上げ高が5年も連続で落ち続けるわけがない。

要するに、ビジネス環境が完全に変わってしまったのだ。

■非常に元気な競争相手たち

クラウドサービスは非常にニーズの高いサービスなので、IBMのライバル企業もこぞって参入している。

その中でも一番の脅威はなんと言ってもAmazonだろう。最初は赤字覚悟でサービスのボリューム量を増やしまくり、やがて質も向上させた結果AmazonのクラウドサービスであるAWSはクラウド市場で圧倒的なシェアを誇っている。マイクロソフトとGoogleも頑張っているのだが、やはり本気を出したAmazonには敵わない。

まずは圧倒的な低価格でシェアを握り顧客を自社サービスに慣れさせ、そしてその後にメーカーや宅配業者に費用負担を迫り、最終的に顧客への提供価格を上げるというAmazon戦法は本当にえぐい。

実際に通販でまずそれをやってみた結果、全米で驚異的な数の小売店が閉鎖に追い込まれている。日本でもそうだろう。ECが広がるとともに、小さな個人経営の小売店を駆逐してきた大型店舗が次々とアマゾンに駆逐されている。

最初に低価格を提供されるとどうしても消費者はそちらにいってしまう。それに低価格なだけではなく、Amazonは完全に顧客本位だ。常に顧客のメリットを考えている。例えばAmazonプライムなんてほとんど赤字のサービスだが、たった数千円支払うだけで動画を見まくったりすることが出来るし、通販でのメリットを提供してくれる。

そんな企業が同じ土俵に上がってきて、しかもクオリティの高いサービスを提供されたらIBMのような企業が勝てるわけがない。それにGoogleやApple、その他の元気なライバル企業たちも続々と参入してきている。

それらの企業が現役バリバリのメジャーリーガーだとしたら、IBMはそろそろ引退して野球解説者になろうかというロートル選手だ。

「IBMは結構な競争に巻き込まれてしまっている」というバフェットの言葉はなるほどその通りで、競争している競争相手たちは相当に手ごわいのだ。

■かすかな光明

そんなこんなでIBMは今元気なIT企業たちにボコボコにされ、業績を落とし続けている。

それでは、このままIBMはダメになる=倒産まで追い込まれるのだろうか。おそらくそれは無いだろう。ロートルにはロートルなりの強みがある。IBMにかすかに差している光明を以下に述べていく。

1.売り上げの減少が下げ止まった

2017年10~12月期にIBMは6年ぶりの増収を達成した。そして1~3月期は売上は横ばいだった。少しいい兆候が見えてきたように思える。しかし、6年ぶりの増収はメインのシステム部門の売り上げ増であり今後も継続的に期待できるものではないとして株価は下落している。

2.新規事業は成長している

IBMは人工知能のワトソンが有名だが、そのほかにもクラウド事業やモバイル端末を対象にしたサービスの提供などを成長分野として育てている。その成長分野はアナリストや投資家の期待には及ばないが、十数パーセントづつは売上高が伸びている。

3.AI市場で先行している。

IBMの人工知能であるワトソンは商業化された初めてのAIだ。日本企業でも今、ワトソンを導入している企業が次々と現れている。ソフトバンクなどはなんとワトソン君に新卒の採用を一部任せている。

どのような部分を任せるかというと、エントリーシートをワトソンにチェックさせて項目ごとに評価を行う。そして合格基準に至った項目については選考通過、それ以外の項目については人間が判定を行うというオペレーションらしい。ワトソンを使用することで、人事採用担当者がエントリーシートをチェックする時間が75%カットさせるとのことだ。

もちろんライバル企業たちもこぞってAIの開発に取り組んでいるが、商業化という面ではIBMのワトソンが一歩抜きんでている。

■IBMは割安か

IBMの一番の強みは既存顧客の多さにある。

例えばすでにIBMのシステムを使っている企業や官公庁は今更別の企業が開発したシステムに乗り換えることはない。そうすると、クラウドサービスを使用する場合もおそらくは選択肢の第一候補はIBMとなるだろう。

しかしクラウドサービスを顧客に提供しすぎると、メイン事業であるシステム販売の利益が圧迫されてしまう。システム販売は非常に美味しい商売で、売った後も定期的なメンテナンスなどで儲けることが出来る。それに顧客の囲い込みという点でも素晴らしいメリットがある。

いったん顧客にクラウドサービスを提供してしまうと、気に食わなかった場合他社のサービスを使用されてしまう可能性がある。なぜならシステムを丸ごと入れ替えるよりかは金もかからず、簡単に乗り換えられるからだ。

その点、どのような工夫をするのかは今後の課題だろう。

恐らくワトソンを使用したサービスとクラウドサービスをミックスさせて顧客に使用させ、顧客がIBMのサービスに依存せざるを得ない状況をつくっていくしかないのではないだろうか。

以上のような状況を踏まえて、IBMの株価が割安かどうか考えてみると非常に判断が難しい。株価は141ドル、PERは23倍、PBRは7.44倍で配当利回りは4%。配当利回りを見るとかなり魅力的な水準で割安なようにも感じる。

しかし事業環境を調べてみると、「これはきつな」と思わざるを得ない。PERやPBRどうのこうのというよりも、ライバル企業が協力すぎてIBMが圧倒的に逆転できる要素が極めて少ないように思えるのだ。

でも、実はおいらはIBMに興味がある。どうしてもワトソンが気になる。そしてシステム部門も案外大丈夫ではないのかと適当に思ったりもする。

指標面を抜けば間違いなく割高な株なんだが、どうしても気になる。配当利回りだけでない何かがありそうな気がする。株価が爆上げしたあとに買っておけばよかったと後悔するような気もする。

だから、気になって眠れないんだ。

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