ー24時間働けますか?ビジネスマ~ン、ビジネスマ~ンー
昔、リズミカルな音楽に恐ろしいフレーズを乗っけて流れていた、あのCM挿入歌を覚えていらっしゃる方はいるだろうか?
某大手製薬会社が発売していた栄養ドリンクのCMなんだが、その頃の日本では本当に24時間働くことが美徳とされていた。
「昔はなあ、深夜の1時から会議をやって、朝の4時から仕事を始めたもんなんだよ!!お前ら若造は甘いんだよ!!もっと働けクソガキどもが」
ハゲ上司が酔っぱらうと、いつもそんな感じでご指導をしてくださるのだが、さすがにおいらが入社した時点でも深夜の1時まで会社にいる人間は中々いなかった。
しかし、平成の前半くらいに入社した社員たちにとっては、別にそれは普通のことであって、会社に泊まり込んで朝まで働くことなど、どの会社でも日常茶飯事だったらしい。
「今の若い奴らは根性がない」
ハゲ上司がそう言うのももっともで、多分、最近入社した社員たちに深夜1時まで残業することを命じてしまったら0.5秒で辞表を提出されてしまうだろう。
「なんで、あいつは定時に帰れるんだ!!」
完全割り切り型の新入社員が毎日定時きっちりに帰るのを見て、いつもハゲ上司は怒り気味にそう言う。
確かに、おいらもその新入社員が定時に帰るのを見ると、「ちゃんと働いてんのかあいつは?」、と疑問に思ってしまう。
しかし、実際のところ考え方として間違っているのは、圧倒的にハゲ上司や彼らの上の世代の社員であるおいらの方なのだ。
なぜなら、本来労働者は雇用契約に基づいて定めれている定時の時間までしか働く必要はなく、たとえ残業などしても残業代が支払われないケースがほとんどだからだ。
ーサービス残業ー
この異常な風習こそが、企業に洗脳され家畜化した日本のサラリーマンの異常性を最もわかりやすく表しているのではないだろうか?
厚生労働省が地域医療を守る病院等への特例として、なんと年間2000時間を医師の残業時間の上限とする案を提出したことが大炎上している。
この2000時間という数字は、一般的に過労死をする可能性があると言われている労働時間を遥かに超越する数字だ。
通常、1日8時間、週40時間以上の法定労働時間以上の残業を従業員たちにさせる場合、企業は労働組合と36協定を結ばなければならない。
企業側と労働組合との間で、労働基準法36条に基づいてサブロク協定(36協定)が締結されると、企業は年間の残業時間の上限を360時間とすることが出来る。
月に換算すると45時間が残業の上限となるのだが、以前は36協定を締結していても余裕で年中月45時間以上社員を残業させている企業が結構あった。というか、今も実質上はそうだろう。
サブロク協定を結ぶ場合、繁忙期等に年間6回限り45時間以上の残業を可能にする特別条項を加えているケースが多いが、そんなものは問答無用という感じで年中45時間以上の残業をさせていたのだ。
風向きが変わったのは、大手広告代理店で若手社員が自殺をしてしまうという、あの痛ましい事件があった後からだ。
あれ以来、「残業は美徳」という価値観が異常なものだということに多くの人が気づき始め、徐々にではあるが日本企業でも「早帰り」や「残業は基本禁止」等が定着しつつある。
ただ、それでも一部の企業では様々な方便を使って違法なサービス残業を余裕でさせているし、洗脳されている従業員たちは自分たちが搾取されていることにも気づかず企業の言いなりとなっている。
なぜかというと、企業と労働者の立場を比べてみた場合、労働者は圧倒的に立場弱いので、「残業するのが普通」という日本企業を侵食している異常極まりない価値観に逆らうことが中々出来ないのだ。
逆らうと、会社に居づらくなってしまったり、上司との関係が悪化して仕事がやりにくくなってしまうからね。
そのため、労働者たちは、「まあ、仕方ないよね。みんなも残業してるんだから」と自分を納得させて違法な残業をさせられることを受け入れているのだ。
「そんなことない、みんな働くのは楽しいんだよ!!もっと働きたいんだよ!!」
とかわめく時代錯誤のオッサンがたまにいるが、そんなわけねえだろ...笑。
なぜなら、社会の風向きが代わり、政府が「早帰りせよ」という感じのお触れを出した瞬間、以前までは遅くまで残って仕事をしていた人間たちが高速で退社するという現象が各企業で起きまくっているからだ。
本当はみんな仕事なんてとっとと終わらせて早く帰りたかったんだよ。
ただ、「残業は美徳」というスローガンがあったから、帰りたくても帰れなかっただけだ。
毎日残業をしていると、やはり次の日に疲れが残ってしまうし、何よりもプライベートな時間が削られてしまう。それに加えて残業代をきちんと支払ってもらえるわけでもないので、やはり「残業は嫌だ」というのが大多数の労働者たちの本音なんだろう。
一方で、中には本当に「働くことが楽しい」という残業を厭わない人も稀にいる。そういう人は、大体の場合企業の中でもごく少数派に属する「出来る人」に多い。要するに、本物のプロフェッショナルだ。
彼らは、本当に仕事に対してプライドを持っているので、様々な工夫をしたり努力をしたりすることを厭わない。
なので、大多数の無気力な社員が「早帰り」に狂喜乱舞して高速で定時退社していく一方で、黙々と以前と同じ仕事量を同じクオリティでこなすためサービス残業を自主的に続けている。
ープライドを持って仕事をするー
この意味において、医師という職業以上にシックリとくる職業は正直思い浮かばない。
医者というのは、本当にメチャクチャ大変な仕事だ。総合病院に勤務する医師等であれば、夜間に救急車で患者が運び込まれると深夜でも呼び出されることがあるし、医師は常に人の命を預かる機会と隣り合わせだ。
もちろん、個人病院を開いてボロ儲けしている金儲け目当ての医師もいるが、大体の医師は自分の仕事に対して非常に高いプライドをもっている。
そのため、ハードワークを本当に厭わない医師も多い。特に医師の数が少ない地域の総合病院なんかでは、毎日クタクタになるまで働き、睡眠薬を服用して短い時間だけ眠り、また病院へ出勤するという医師もいると聞いたことがある。
なので、おいらは基本的に医師という職業を非常に尊敬している。
しかし、残業上限2000時間という提案は、そんな医師ですら悲鳴を上げるようなレベルの提案なのだ。
正直、おいらの体感値だと、月100時間以上の残業が続くとまあまあしんどい。
昔の方からすると、「ナメたこと言うんじゃない!!」というレベルかもしれないが、根性がないのでやはりしんどくなってしまう笑。
ただ、残業上限2000時間というのはそれを遥かに上回っている数値だ。
最近は本当に医師不足で、特に地方の総合病院なんかは慢性的に医師が足りていない状態が続いている。
そのため、その打開策として、「じゃあ、たくさん働けるようにしたらよくね?」という発想だと思うのだが、医師だって人間だから体の構造上働ける時間の上限は普通の人と同じのはずだ。
人間は、休憩を入れて交感神経と副交感神経を切り替えないと自律神経が乱れてしまい、体調を崩すという神経構造を持っていて、これは皆同じだからね。
そのため、本当に24時間働こうとすると体に無理が出てくるので、冒頭のCMの栄養ドリンクや、ビタミン剤やカフェイン、それから最悪の場合には瞬時に深い睡眠を取るために睡眠薬や睡眠導入剤を服用したりする。
そして、結局は体を壊してしまう。
人間はマシーンではないので、やはり休息を入れて活動をしないと、結局は無理がきてしまうのだ。
そんなことは誰にでも分かっているはずなのだが、それにも関わらず残業上限2000時間という驚異的な提案がなされるところに、日本社会の異常性が滲み出ている。
「医者が足りなくて患者を救えない」という問題に対して、「医者を無限に残業させられるようにしよう」という解決策を提案するのはどう考えても間違っているからね。
今回炎上している残業上限2000時間の問題だが、あれは医師だけの問題ではないように思う。
しっかりと認識しておかないといけないのは、我々は「過労死するラインを超えるまで残業を可能にしよう」という提案を政府機関がするような国で働いているということだ。
つまり、いまだにこの日本では「残業は美徳」という精神が根強く残っているのだ。
ということは、サラリーマン等の労働者は社会の家畜であり、この日本社会は構造的に家畜から搾取しないと成り立たない世の中となっているのだ。
もう、乳が出ないのに絞られ続けているヤギのような感じだね笑。
なので、労働者側でいる限りはこれからも搾取され続けていく可能性が非常に高い。
一体どうやったらこの状況を抜け出すこと出来るのだろうか?
恐らく、海外に脱出するか、資本家側にシフトするか、個人事業主になるしかない。
この日本で株式会社が支配する陰鬱なコミュニティーで働いている限り、永久に搾取され続ける可能性が高いからね。
なので、海外に脱出するか、株式を買って資本家側にシフトしていくか、自分の得意なことを仕事にする個人事業主になるのかして、そこから脱出するしか方法はない。
どの選択肢も社畜に慣れすぎると不可能なように感じるが、案外冷静に考えていくと、こういった選択肢を選ぶほうがどう考えても合理的なような気がしてくる...。
サラリーマンを十数年やってきて思うのだが、やっぱりこの職業は長期的な観点で考えると割りに合わないかもしれないね。
なので、何とかしないといけないんだが、今のところは株を買ったり、このブログを運営したりするのが関の山なので、しばらくはまだ陰鬱な顔をしてサービス残業をするしかない。
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