ようこそ、投資というパラレルワールドへ。おや、おサルさんはまだ投資のことはよく知らないらしい。
でも大丈夫、専門家に全て任せていればノープロブレム。何の心配もいらない。さっそくだが、ここにおいしい投資案件がある。それを今から君に紹介する。だけど誰も言ってはいけないよ?約束だ。
なぜなら言ってしまうとみんながこの投資に殺到してしまう。だから誰も知らない今がチャンスだ。そう、今しかないんだ。これがその案件だ。
・購入物件:投資用ワンルームマンション
・価格3000万円
・支払方法:20年ローン(貸出利率3%※変動金利)
・月5万円の家賃保証(不動産管理会社が家賃を保証します)
・家賃を返済に回すので、月々の返済額は7千円程度。
「どうですか?先輩、俺、この投資用マンションを購入しよう と思っているんです」
サル、いや、後輩に相談されたおいらはこう即答した。
「やめとけ」
うまい儲け話は疑え
以上の話は実話だ。入社2年目のサル、いやC君という後輩が知り合いから紹介された不動産業者に投資用のワンルームマンションを買わされそうになっていた。
C君は業者に完全に洗脳されてしまっていたので、もう少しで3000万円の投資用ワンルームマンションをローンを組んで買ってしまうところだった。
少しでも勉強して株や投資をやっている人間なら、この投資案件がほとんど詐欺のようなものだということは容易に判断できるだろう。
業者の口説き文句は、「ローンが完済されれば3000万円の資産と月5万円の安定した収入が手に入ります」だったらしい。
しかしよく考えれば、どう考えてもこの投資案件はおかしい。それを順を追って説明していこう。
1.最後に手に入るのは3000万円の資産ではない。
セールスマンは、言葉たくみに投資初心者のC君にローン返済後は3000万円の資産が手に入ると売り込みをかけていたようだが、これは間違っている。
元々3000万円の価値の不動産でも、年月が過ぎるにつれてその価値は徐々に失われていく。なぜなら現物である不動産は構造上の劣化は避けられないからである。
一等地のマンションであれば土地の値上がりが期待できるので、劣化した分を相殺して価値が上がる場合もあるだろうが、そのマンションはローカル駅から徒歩20分程度の位置にあり、とても今後地価が上昇するとは考えられなかった。
そして、最後に手に入るのは築20年のボロボロのワンルームマンションである。その時の価値は少なくとも3000万円よりかは大きく落ちているだろう。
2.家賃など誰も保障してくれない
家賃を月5万円をもらえる大家さんになれる。社会経験の薄いC君には大家さんというワードがとても魅力的に思えたらしい。
しかし冷静に考えてみればわかることだが、家賃など誰も保障してくれはしないのだ。
不動産管理会社がC君からワンルームマンションの管理を受託し、そしてその会社が住居人の募集なども行い、さらにC君には月5万円の家賃を保障するというシステムらしいが、契約書をよく見たほうがいい。
永久に家賃5万円を保障します。
そう書いてあるのだろうか?書いてあったとしても絶対条項なのだろうか?どこかに家賃価格を交渉する場合もある、という記載はないのだろうか?
おそらく一般的には永久に家賃を保障することなどはないだろう。空室が続いたり、そのワンルームマンションの近くの家賃相場が下がればまず間違いなく家賃の値下げ交渉が行われるだろう。
もっとひどい場合だと、家賃自体が支払われないという可能性も十分にありえる。
3.利子をいくら支払うのか
C君は3000万円の不動産を20年ローンを組んで買わされるところだったわけだが、利子だけでいくら支払うのかまったく理解していなかった。
3000万円を年利3%フルローンで借りて、20年間元利均等返済(毎月一定の金額で返済していく方式)で返済していくと利子がいくらになるかわかるだろうか?
約1000万円だ。
ということは、C君は3000万円+1000万円=4000万円を支払ってワンルームマンションを購入することになる。
数パーセントの利子であっても積もり積もればものすごい額になる。だから地銀が血眼になってマンション投資のあま~い投資案件を不動産業者とタッグを組んで作り上げ、サラリーマンに融資を行うのだ。
だって、儲かるんだから。
さらに言うと、この案件のローンは変動金利に設定されている。変動金利というのは世の中の金利に併せて変動していくタイプの金利設定だ。ということは、金利が上がっていけば当然返済する金額も上がっていく。
ちなみに今日本はマイナス金利で史上最低の利率だが、世界の金利は上昇傾向にある。実際、アメリカの中央銀行であるFRBは利上げを加速させており、米国長期債の利率は3%程度まで跳ね上がっている。
景気回復が進む中、連動して日本の金利も上がっていくことはまず間違いないだろう。
ここまで読んでみてこの投資案件にチャレンジしてみようという人はあまりいないだろう。しかし、信じられないことに同じような投資用マンションをこの業者から実際に買ってしまった人が会社に何人もいるらしい。
恐らく何も調べずに業者の話を鵜呑みにして購入してしまったのだろう。
そしていったん契約を結んでしまって時間が経過すれば、よほどの詐欺話でもない限りその契約を破棄することはできない。
投資のリスクをきちんと理解しよう
おいらは何も不動産投資が悪と言っているわけではない。実際不動産投資で大成功している人世の中にはいっぱいいるし、おいらの先輩でも複数の不動産を所有してプチ富豪のようになった人もいる。
しかし、そういう人たちは必ず地道に勉強を繰り返し、そして慎重に慎重を重ねて不動産を購入している。
その不動産を所有することによって起こりうるリスクを分析し、期待できるリターンと比較して購入を決めているのだ。
基本の基本としては、必ず物件を何度も見にいっている。例えば、飲食店に貸し出す用の不動産であれば実際に行ってみて、そこが人通りの多い場所か、近くにオフィス街はあるのか等をチェックする。飲食店が長く借りたがるような立地かどうかを確認するのだ。
驚くべきことに、C君は3000万円を投資しようかというワンルームマンションを見もせずに(業者に写真だけみせてもらったらしい)購入しようとしていたらしい。
不動産投資に関するきちんとした手引書を何冊か読めば理解できることも知らずに投資を行おうとしたわけだから、もはや狂気の沙汰と言ってもいい。
例えばC君がもしも定期的な不労所得を得ることが目的であったなら、REITを買えば済む話だ。
REITとは、ETFと同じように複数の不動産を箱に入れて上場している金融商品だと思えばいい。※ETFは複数の株を箱につめ込んでいる。
・REITイメージ
このように、色々な地域や種類を分散した複数の不動産から構成されているのがREITで、その不動産から得られる家賃収入はREITを保有している投資家に分配金として還元される。
日本のREITの中には分配金の利回りが5%を超えるものもあるので、例えば1200万円分REITを保有していれば税引き前で60万円の配当収入を得ることができる。
そうすれば、C君の目的(月5万円×12ケ月=60万円)は達成されることになる。おまけにRITEであれば複数の不動産に投資していることになるので空室リスクや家賃の下落リスクをかなり低減出来る。
もちろんREITは株式市場に上場しているので値下がりのリスクもあるし、分配金が減るというリスクもある。
しかし、そういうリスクを考慮してもC君が契約しようとしていた投資用ワンルームマンションの案件よりかは安全だとおいらは思う。
C君が本気で20年後にボロボロのワンルームマンションを資産として手に入れたいと思っていたのなら話は別だが。
投資は絶対に勉強してからやれ
これは全く投資の勉強をせずに投資をやったことのあるおいらが言うのだから間違いない。絶対に投資を始めるのは勉強をしてからにするべきだ。少なくと10冊以上はその投資に関する本を読んだほうがいい。
投資というのは不思議なもので、興味を持った瞬間に今すぐに始めなければ儲けることが出来ないという脅迫観念に襲われることがある。
だけどそんなことは絶対に無い。長期的にみればいつだって儲けのチャンスはあるし、いつだって損失を被るリスクがある。それが投資の本質だとおいらは理解してる。
だから、焦る必要など全くない。きちんと勉強してから堅実な投資を始めるべきだ。
PERやPBR、配当金が支払われる仕組みをきちんと理解してからでも株を始めるのは遅くないし、きちんとローンの金利や税制、空室のリスクなどを十分調べてからでも不動産投資を始めるのは遅くはない。
特に大きな金額を突っ込む際は徹底的に調べるべきだ。株であれば少額から始めて徐々に勉強を重ねていき、チャンスがくれば大きく賭けるということが出来るが不動産の場合はそうもいかない。
なぜおいらがここまで口酸っぱく言うかというと、それで損をしたことがあるからだ。
リスクを理解しないで投資を行うことは自殺行為に等しいと言ってもいい。
お金は命の次に大事なものとまでは言えないが、お金で大体のことが解決出来ることからも分かる通り、人間にとってそこそこ重要なものであることは間違いない。
そんな大切なお金をドブに捨てるような投資をすることは、おいらとしては絶対に避けたい(すでにやらかしているが笑)。そして、おいらと同じように投資で資産を増やそうという同志たちにも避けていただきたいと思っている。
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