ーあの頃の僕といえば・お金の増やし方さえ知らず・ただ・不器用にメスを追いかけて・股関がうずいていた・ただ、ヤりたくて・ただ、ヤりたくて・唇噛みしめて泣いてたー
<ただヤりたくて:作詞作曲・かぶまくら>
そう、遠く過ぎ去ったあの季節、冬の風にまだ微かに藁が焦げたような秋の香りが混じっていたあの季節に、僕は彼女と出会った。
運命とは不思議なもので、本当は出会うはずのなかった二人の人生が、何かをはずみに交錯して、そこでぶつかり合った偶然が、新しい運命を形作ったりして、思いもかけないストーリーを作り出したりする。
これは、そんな不思議な運命という名の音階が弾けて生まれた、この世に二つとないストーリー。
「かぶまくらのことさ、俺の彼女の友達が紹介して欲しいってさ」
友人が冗談のような感じで言った。
「別にいいよ、女に困ってるわけじゃないし」
そう言ったのだが、実際は数か月前に彼女に振られていた僕は、つまらない大学生活にうんざりしていたので、内心少しざわめいていた。
「かっこつけてんじゃねえよ、お前、メス美と別れてからずっとゼミにも行ってなかったんだろ?」
友人の言う通りだった。僕は、その年の夏休みに恋人だったメス美に、「かぶまくら君てさ、友達としてはいいんだけど、男としてはちょっと物足りないかな」、と言われ、見事に振られたショックをまだ拭い去れないでいた。
「...」
「あっちはお前の写真を見て結構気にいってるみたいだぞ、メールだけでもしてみたらどうだ?」
そのころはまだスマホなんてものはなく、みんなガラケーのEメールで連絡を取り合っているような時代だった。
「まあ、メールだけなら」
そう言って嫌々そうなフリをしていたのだが、実際のところ、新たな出会いの予感に、僕の心臓は、トクン、トクン、と音を立てていた。
ーはじめまして、猫美ですー
それが、彼女からのファーストメールだった。
「お前、深田恭子が好きらしいけど、猫美ちゃんは猫顔だけど可愛いらしいぞ!猫娘みたいな感じだって」
「はは、猫娘か」
笑ってそう答えたのだが、僕は猫という動物が大好きで、柔らかなその毛皮の感触と肉の弾力が混じり合ったさわり心地や、ゴロゴロと鳴る喉の振動を想像するだけで幸せな気分になれたので、猫美という名前にひどく親近感を覚えた。
ーかぶまくら君のこと、もっと知りたいなー
トクン、トクン。
猫美からのメールが、僕の心臓のポンプを刺激して、彼女と別れてから動きが鈍くなっていた僕の心に再び暖かい血液が循環していくような感覚を感じた。
それからというもの、僕と猫美は毎日のようにEメールでやりとりをするようになっていた。
ー猫美は食べ物は何が好き?ー
ーお魚とかかな笑ー
ーはは、健康的だね、似てる芸能人は?ー
ー芸能人とかはないけど...よく猫娘に似てるって言われるよー
ーゲゲゲの鬼太郎の笑?ー
ーうん、性格も猫に似てるってよく言われるー
ーじゃあ、おてんば娘だー
ーそうかもしれない笑ー
メールでやり取りをするたび、僕は天真爛漫な性格の彼女に魅かれていった。
彼女は、恋人に振られてからポックリと空いてた僕の心の中のパズルのスペースに、まるで設計図の段階からそうであったかのように、ぴったりと収まるピースのような存在になっていた。
ー猫美に会いたいー
そんな僕の想いを見透かしたかのように、唐突に友人がこう言った。
「かぶまくら、今度俺の彼女と猫美ちゃんと4人で飲みにいかないか?」
「え...」
「猫美ちゃんがさ、かぶまくらと会いたいんだってさ」
トクン、トクン。
僕の心臓に内蔵されているポンプの動きが早くなり、心臓が高鳴るのを感じた。
ー猫美と会えるー
僕は有頂天になりそうな気持ちを抑えながら、「まあ、いいけど」と、無理してクールにそう答えた。
「ここの居酒屋だな」
友人に連れられて居酒屋の前に到着する頃には、僕の期待と緊張はピークに達していた。
「猫顔の子ってさ、結構かわいい子多いよな」
友人が囁くようにそう言ったのだが、確かにそれはそうで、猫に似ている女の子は柔らかい雰囲気で、それでいてどこかイタズラっ気のある可愛らしい女性が多い。
「はは、本当に猫娘だったりしてな」
そんな感じで言ったのだが、僕の心臓は、ドックン、ドックン、と大きな音を立て続けていた。
「じゃあ、取りあえず入るか」
店の中は大衆居酒屋らしく、ガヤガヤと騒々しかったのだが、逆にその騒々しさが僕の心のざわめきを少し落ち着かせてくれた。
「かぶまくら君、ひさしぶり~!!」
友人の彼女が甲高い声でそう言った。
「お、この子が猫美ちゃん?メチャクチャ猫娘に似てるじゃん!!」
「ほら、猫美、かぶまくら君に挨拶しなよ」
友人の彼女に促されて猫美が立ち上がり、恥ずかしそうにしながら僕に挨拶をした。
「あ...初めまして、猫美です」
その瞬間、僕は思わず声を失ってしまった。
「どうしたんだよ、かぶまくら、猫美ちゃんにちゃんと挨拶しろよ、柄にもなくお前照れてんのか笑?」
「...」
友人が僕の緊張をほぐすようにして、わざとそう言ってくれたのだが、僕は気のきいた挨拶さえ出来ず、無言のまま席に座った。
だってね.....。
ー本物がきちゃったんだー
つづく
株で夢をかなえよう
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