「老後破産」
この絶望的な響きのする言葉を聞いたことのある方も多いと思うが、これは書いて文字の通り、「仕事をリタイアした後に破産をする」、ということを指す。
以前書いた記事で、今後は定年退職の年齢が70歳に引き上げられる可能性が非常に高いと書いたが、以前までは55歳や60歳で定年退職し、あとは退職金で悠々自適の生活を送るというのがサラリーマンの定番パターンだった。
しかし、長引く不況で企業が支払う給与の額は下がり続け、おまけに退職金の額も全体的に大きく削減されてしまったため、今では老後に年金と退職金で悠々自適の生活を送るという老後プランを選択出来るのは、恵まれたごく一部のサラリーマンだけという風になってしまっている。
そのため、退職したとしてもわずかな年金を頼りに生きていくしかないという人も多く、そういった層に属する人々が退職後に生活費を工面するのにも行き詰ってしまい、最終的には生活が破たんしてしまうケースが続出しているのだ。
そして、それは恵まれた境遇で働いていたはずだった人たちにとっても他人事ではない。
現役時代に多額の給与を手にしていたり、そこそこの退職金を貰うことが出来た人たちでさえも、リタイア後に破産状態に陥ってしまうという現象が起きているのだ。
まず、老後に自己破産状態に陥ってしまうのはどういったケースが多いのかというと、大まかに分けると下記の通りだ。
■ケース1・支出が収入を上回る
これは、年金だけを頼りにして生活している場合に起こる可能性が高いケースだ。
厚生労働省が発表している、「厚生年金保険・国民年金事業の概況」、によると国民年金の平均支給月額は5.5万円で、厚生年金は14.7万円となっている。
ということは、両方の年金を受け取っていたとしても、収入は19.7万円だ。
そして、上記はあくまで平均支給額なので、厚生年金の保険料の支払期間が短かったり、そもそも保険料を滞納していた期間があったりすると、支給額はさらに減ってしまう。
そのため、年金だけを頼りに生活する場合、月々出ていく生活費が年金支給額を上回ってしまい、結果として貯金を切り崩して生活しなければならないといったケースが多く発生しているのだ。
例えば、家賃が6万円くらいで、光熱費が3万円、そして食費が月4万円、携帯代その他が1万円~2万円程度だとしても月に15万円くらいのお金が必要になってくる。
これは、都心部で独居者が生活するための最低限くらいの費用だと思うのだが、例えば貰っている年金の額が7万円程度の場合、年間切り崩す貯金の額は以下の通りとなる。
・(15万ー7万)×12ヶ月=96万円
この前提で考えた場合、例えば65歳で退職して85歳まで生きるとすると、以下の金額が手元に必要となる。
・96万円×(85ー65)=1920万円
なんと、1920万円もの貯金が必要だということになる。
日本の女性の平均寿命が87歳、男性が81歳となっていることを考えると、85歳まで生きる可能性は誰にでも全然あり得る。
ということは、上記の前提で考えた場合でも平均的に老後これだけのお金が必要だということになる。
厚生労働省の、「就労条件総合調査の概況」、によると勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の平均的な退職金の額は下記の通りとなっている。
・大学卒:1941万円
・高校卒:1673万円(管理・事務・技術職)
・高校卒:1128万円(現業職)
このデータから考えると、大卒で貰える退職金の額でも2000万円を切っている。そして、あくまでも長期間勤続した退職者という前提のもとの金額なので、実際の平均値はもっと少ないと思う。
仮に長期勤続した大卒の平均値である1941万円を退職金として受け取ったとしても、月々の生活費として切り崩していった場合、実際は驚くほど頼りない金額だ。
さらに、ここまでの金額が貰えないケースの方がほとんどで、中には退職金を貰えないという前提の人間も多くいることを考えると、老後破産をしてしまう人たちはそもそも退職金自体を貰っていないケースというのも多く想定されるのではないだろうか。
そして、そういった方の多くは貯金等の資産も非常に少ないため、生活費の支出が、年金受給額と切り崩す貯金の総額を超えてしまい、最終的に生活が立ち行かなくなってしまって老後破産に追い込まれてしまうのだ。
■ケース2・住宅ローンや教育費の負担で破産
このケースは、リタイア前は比較的恵まれた労働環境で働き、それなりの賃金を貰っていた層にも起こり得るパターンだ。
おいらはまだ自分の持ち家を持っていないが、同僚の中にはすでに持ち家を保有している人間も結構いる。
マンションや一軒家などの持ち家を買う場合は住宅ローンを組む場合が多いのだが、返済期間は通常35年などの長期で設定される場合が多い。
都心の方だと5000万円超の物件は普通だから、そういった物件を持ち家として買った場合、月々10万~20万円の返済を行っていくこととなる。
そのため、若い頃に住宅ローンを組んで家を買った場合はいいが、30代後半や40代になってから家を買った場合は退職金で住宅ローンを返済するハメになる場合もある。
退職金で住宅ローンを返済してしまった場合、相当な額の貯金がなければ老後を悠々自適に過ごすことは出来ない。
そして、退職金で住宅ローンを返済せざるを得ない人たちというのは、「相当な額の貯金」を持っていない場合がほとんどだろう。
その結果、老後に満額年金を貰ったとしても、自分たちが以前に考えていた悠々自適な生活を過ごすだけのお金を工面することが出来ず、結局は出ていく支出が収入額を上回るという状態が続き、最終的に破産状態に追い込まれてしまうのだ。
教育費の場合も同じで、私立の文系大学に行かせるだけで約700万円程度のお金がかかると言われている。
そして、最近では中学から私立に通わせる家庭も増えており、その際に通わせる塾等の費用も相当なものだ。
そのため、子供にかかる教育費というのも当初想定していた以上の出費となり、住宅ローンなどと一緒に重なると相当な負担となり、老後の生活を圧迫してしまう可能性が高い。
以上が、事前に想定しやすい老後破産に陥るパターンだが、次に想定外の事態で老後破産に陥るパターンもあることを考えておかないといけない。
■ケース3・がん等の病気の治療費で破産
がん治療というのは、健康保険で認定されていない高額な治療薬や治療方法を必要とするケースが多いので、非常に金銭的な負担が大きくなる場合が多い。
現在、日本は高齢化の影響もあり非常にがんの罹患率が高く、日本人の2人に1人ががんに罹る可能性があると言われている。
そのため、我々が最も警戒すべきリスクの一つと考えてもいいだろう。
小野薬品という会社が発売しているオプジーボという画期的ながん治療薬が以前発売されて話題となっていたが、なんと年間3500万円もの費用がかかるということで社会的に問題となっていた。※その後、オプジーボは薬価が改定された。
この例からも分かるように、がんに罹患した場合は相当な額の費用が必要となるケースが多い。
そのため、当初想定していなかった高額な治療が必要となる病気に罹患した結果、予測していた以上のお金が出て行ってしまい、最終的には生活が立ち行かなくなってしまい破産状態となってしまうケースがあるのだ。
現代は平均寿命が伸び続けており、普通に100年生きる人たちも増えてきているので、高齢化と比例して増える疾患によって発生する多額の治療費リスクは想定しておくべきだろう。
他にも交通事故で突然の出費が必要になったや、子供が働かずにニート化したなど、様々な要因によって想定していた以上の支出が発生した結果、老後破産に追い込まれるというケースは結構多いようだ。
老後破産は年老いてからの問題なので、若いころのように体に無理をきかせて解決するのが非常に難しい。
若い頃であれば、少々金銭的に困窮したとしても、朝から晩まで仕事を掛け持ちして働いたり、副業をしたり、資格を取ったりして収入の底上げを図ることで問題を解決出来る可能性がある。
しかし、リタイア後に金銭的に困窮した場合、体力も落ちているし、就職先やアルバイト先も限られてしまっている。そして、何よりも気力が湧いてこないケースがほとんどだろう。
そのため、土壇場になって対策を取るのはほぼ不可能だと言っていい。
だったらどうしたらいいのか?
事前に老後破産状態とならないように、対策を練って準備しておくしかない。
老後破産とならないための準備とは、「自分が死ぬまでにどれだけのお金が必要で、そのためのお金をどうやって用意するか」、を考えて行動することを指す。
人はライフステージ毎によって様々な出費に見舞われるため、本来はその段階ごとに応じて最適な金融商品を選び、「様々なお金の準備」、をしておく必要がある。
これをファイナンシャル・プランニングというのだが、一般的にファイナンシャル・プランニングはFP等の専門家に相談しながら作り上げていく場合が多い。
住宅ローン、学資保険、生命保険に損害保険...それから投資信託も。
こういった金融商品をライフステージごとに準備しておくことで、各段階におけるお金の問題を事前に解決しておくのだ。
ただ、おいらは思うのだが、ファイナンシャル・プランニングをする大前提にはそのプランを実行するだけの金銭的余裕が必要だということが忘れられがちだ。
いくら綿密なプランを練ったとしても、手元に金が無ければ話にならない。
「生命保険や学資保険、それから住宅ローンをうまく活用しましょうね」という感じでFPは顧客に説明をするのだが、手元に多額の金がなければ、結局は出来ることに限りが出てしまうし、長期的なプランニングをすることは不可能だ。
おいらが思うファイナンシャル・プランニングの肝は、「依頼者毎の資産状況とマッチングしたプランニングを継続して行うことで、依頼者の人生におけるお金の不安を解決すること」、だ。
瞬間的に金の問題を解決したとしても、最終的に老後破産状態に追い込まれてしまうのでは、ファイナンシャル・プランニングもへったくれもない。
要するに、その場しのぎで金利の低い住宅ローンへの借り換えをやってみたり、生命保険で死亡リスクをカバーしてみたりするだけでは意味が無いのだ。
なので、結論とするとFP等のアドバイスを聞くのも重要だが、シンプルに金を稼ぎまくって金融資産を増やしておく必要がある。
その場合、自分が老後どのような生活を送りたくて、その生活を実現するためにはどれくらいのお金が必要なのか一度真面目に計算をしてみる必要があるだろう。
もうね...節約とかしょーもないことには一所懸命になる人は多いんだが、こういった大切な計算を実際にやる人っていうのは驚くほど少ないんだよ。
だから、若い人でも収入と支出のバランスが崩壊して破産したりするし、老後破産という悲劇が日本各地で起きてしまうんだと思う。
「そんな計算してる余裕なんてねえんだよ!!」
というのは簡単だが、その場合は老後の破産リスクを完全に自己責任で許容するという選択肢を選んでいることになる。
偉そうに言ってはいるが、この記事を書いているおいらだって普通に老後破産してしまう可能性はある。
すでに、ご近所さんや親類同士の助け合いが期待できない今の日本社会では、誰もが老後破産リスクに直面してしまっているんだよ。
なので、事前に老後にどれくらいのお金が必要で、そのお金を用意するにはどうすればいいのかを絶対に自分で考えておく必要があるのだ。
はっきり言って、収入を増やすのには通常相当な労力がかかってしまう。
副業をする、アルバイトをする、資産運用をする、昇進するために仕事を頑張る...。
そのどれもが、ある一定以上の労力をかけなければ本当の成果を得ることは中々難しい。
要するに、努力して収入を増やすという行動は、けっこうしんどいのだ。
だけど、これはもう絶対に取り組んでいかないといけない問題なのだ。
住宅ローンの借り換えや、生命保険への加入、それからポイントを使ったお得な節約テクニックでは、問題を解決するのに限度があるんだよ。
お金の問題を解決する究極的な方法は、お金の問題が発生しないほどのお金を手に入れることだ。
その額は、個人によって違うので、最も重要なのは「自分がどれくらいのお金を必要としているのかを把握すること」、だ。
月の家賃、光熱費、食費、その他の費用など、一度自分が将来的にどれくらいのお金を必要としているのか真面目に計算してみることをお勧めする。
退職するころにはどれくらいお金が残っているのか、年間どれくらいの回数旅行に行きたいのか、孫にあげるお年玉の額は?
考えうる限りの必要なお金と、その時手元にあるだろう現金を計算してみよう。
そして、その額と照らして併せて不足額がどれくらいなのかを計算し、その不足額を埋めるために全力で動こう。
何も、リスクの高い投資に手を出す必要なんかはない。
資産の何割かをリスク資産で運用し、あとは本業とは別に派遣のアルバイトやネットを使った副業で肉体をフル回転させて現金を積み上げればいい。
がむしゃらに働いているときというのは金をほとんど使わずに済むので、ちょうどいい節約になって金が貯まっていくはずだ。
とにかく具体的に必要な額を計算して頭に叩き込み、あとは全力で動いて金を用意する。
その際は、「投資だけで何とかしよう」、という甘い考えは捨てた方がいい。
「投資もやりつつ、肉体もフル回転させる」、が正しい方法だ。
投資だけで楽して老後資金が用意出来るのであれば、みんなやっているよ笑。
ただ、目標額をある程度設定すれば、「どの程度頑張ればその額まで到達する」というシュミレーションが出来るので、その目標に向かって進んでいくのであれば、お金の不安はきっと徐々に払しょくされていくはずだ。
「何が不安なのか分からない」という状態が人に最も恐怖心を与え、その結果行動をブレさせて悲惨な結果を招いてしまうこともある。
例えば、何となく1億円が必要だと思ったので、多額の金をマザーズなどに上場する小型株や仮想通貨に賭けて吹っ飛ばした等だね
一方で、「実際に必要な額は3000万円くらいだな」、と分かっていれば、インデックス投資と副業に貯蓄、それから節約も加えるといった感じの堅実な行動を取って目標を達成出来るかもしれない。
なので、老後破産を防止する具体的な方法としては、「頑張って収入を増やす努力をひたすらする」、「自分が必要としているお金を具体的に計算する」、が個人的には有効だと思っている。
魔法のような解決策を考えたかったが、現実的に考えるとこの二つしか思い浮かばなかった。
この方法が正しいと思った方は実践してみるのもいいだろうし、違うという方は別の方法を採用するといいだろう。
ただし、ひとつ間違いないのは、老後破産というのはこの日本に住んでいる限り誰にでも起こり得るリスクなので、そうならないために事前に準備はしておいたほうがいいということだ。
直前になって対策をとってもやはり限度があるので、若いうちからこのリスクに対する対策は具体的に考えておいた方がいいんだろうね。
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