きょうこおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！
太陽に向かってそう叫ぶと、心がすっきり晴れた。
今日も持ち株は漏れなく下落してくれたが、そんなことはもうどうでもいいんだ。
恭子、そう、恭子さえいれば、僕は何もいらない。
まさに、太陽のような存在だと言っていい。
恭子がこの世に存在していなければ、地球上の日照時間は半分になってしまうだろう。
そう、恭子は太陽なんだよ！！
え、どの恭子のこと言ってんだこのボンクラだって？
もちろん、それは深田恭子のことだ。
きょうこおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！
☼ ☼ ☼
この日本、いや、アジア全域において、深田恭子を嫌いな♂など存在していないというのがおいらの持論だ。
それくらい、深田恭子はかわいい。
年齢はもう三十代半ばなのだが、とてもそうは見えないくらい若く、本当にかわいいと思う。
「このボタンを押せば、深田恭子と1年付き合うことができますが、そのかわりに貴方の資産の9割が消えてなくなります」、というボタンがあれば、おいらは1mmの迷いもなく押すだろう。
それくらい、恭子のことが好きだ。
しかし、恭子であれば誰でもいいわけではない。やはり、深田でないとダメなんだ。
．．．。
高校生の頃、おいらは友人に「きょうこ」という名の女性を紹介してもらったことがある。
「けっこうヤンチャな子らしいけど、かわいいらしいよ。メールしてみる？」
友人もそのきょうことは会ったことはなく、友達の友達とのことだった。
おいらの胸は躍った。
そのころから、無類の深田恭子好きだったおいらは、きょうこという名前を聞いただけで期待に胸を膨らませた。
ーかぶまくらは、タバコ吸う？ー
ーもちろん。タバコも吸うし、バイクも乗るよー
実際はバイシクル(自転車)しか乗れなかったが、きょうこに気に入られるため、必死でイキがったメールを送っていた。
きょうこは友人が言った通り、まあまあなヤンキーのようだったが、そんなことはどうでもよかった。
ーわたしもバイクよく乗る！！ー
ーあぶないから自分で運転するなよ。俺の後ろに乗ったらいいからー
メールをするたび、二人の距離は縮まっていった。
ー今日、暴走族の先輩に告られたー
ー断れよ。だって、俺がいるやろ？ー
少しづつ、少しづつ．．．。
ーはやくかぶまくらに会いたいー
ー俺も、きょうこに会いたいよー
そしてついに、きょうこと会う日がやってきた。
☼ ☼ ☼
その前の日の晩は、興奮してよく眠ることが出来なかった。
ついに、二人の運命が交錯する。
よくある恋の始まり、だけど、二人にとっては特別な一瞬。
そう考えると、何となくこの地球に対して感謝の念さえ込み上げてきた。
生きとし生けるもの、それから父と母、それに友人たち。
今この地点の自分を構成してくれている全てのものに、「ありがとう」と伝えたかった。
それからもう一言、「幸せになるよ」って。
．．．。
一足早く待ち合わせ場所につくと、だんだんと緊張してきた。
実際に会ってみて、きょうこに気に入られなかったらどうしよう。
柄にもなく、そんなことを考えていた。
ーもうすぐ着くよー
メールが着て数分後、ついに遠くの方からきょうこがやってくるのが見えた。
ああ、ついにこの瞬間が来た．．．。
きょうこ．．．。
そこにやってきたのは、マフラーを改造した原動機付自転車に乗った巨大なグリズリーだった。
グリズリーは、原動機付自転車から降りると、石畳で舗装された道路に勢いよく唾を吐いた。
信じられなかった。こんなに綺麗な石畳の道路に唾を吐き捨てる生物がいるなんて。
とにかく、僕は体の震えが止まらなくなっていた。
圧倒的な捕食者を目の前にして、僕の体は硬直してしまい、その場から動くことが出来なくなっていた。
ーママに言われた通り、お家でお勉強していればよかったー
そう後悔しても遅かった。
「あんたがかぶまくら？」
だめだ、逃げなきゃ．．．ママ、ママに会いたいよ．．ママ．．。
自然と目に涙が溢れてくる。
「今日はどこ行く？」
「ごめん、宿題まだ残ってるから帰るわ！！」
そう言い放つと、僕は脇目も振らずその場を駆け出した。
早く、早く逃げないと！！
後ろで、きょうこが原動機付自転車のキーを回した音が聞こえた。
だめだ！！逃げ切れない！！
改造が施されたマフラーから、あり得ないほどの排気音が周囲に鳴り響いた。
だめだ！！
ママ、ママ、ママ、宿題したいです！！
宿題、宿題、宿題！！！
宿題したい！！！
PERとPBRの勉強したい！！！
ママああああああああああああああああああ！！！
☼ ☼ ☼
はっと目が覚める。
夢か．．．。
腕に残る巨大な傷を見て、あの悪夢のような出来事を思い出す。
やはり、絶対に深田以外の恭子(きょうこ)には近づいてはいけない。
それが、あの日以来僕が胸に刻んだ人生の絶対的ルールだ。
．．．。
ところで、有名女優の深田恭子さんをCMに採用した東京ガスが、「彼女をCMに採用したら、電力小売り事業の顧客が倍増した」と明らかにしたらしい。
東京ガスは、2016年の電力自由化以来、新電力で首位に立っているが、深田恭子さんを採用したことにより、７月からの3ヶ月で見込んでいた顧客10万人が20万人まで倍化したというのだ。
さすがは深田恭子さん、その影響力は半端ではないようだ。
電力と恭子は全く関係ないにもかかわらず、CMに採用しただけで超大手企業の事業計画を上振れさせるとは．．．。
そこで、おいらはグッドアイデアを思い付いた。
アップルもエクソンモービルもIBMも現CEOには退任していただき、代わりに深田恭子さんをCEOに据えればいいのだ。
そして、バンバンCMに出演してもらおう。
そうすれば、どれだけNYダウが下げようが、日経平均が崩壊しようが、そんなことはお構いなしにアジアでの売上が激増し、株価はひたすら上昇するはずだ。
ガソリンなんてどこが精製したものでも同じだが、深田恭子さんがCEOなら、みんな頑張ってエクソンモービルが精製したガソリンを特定して買うはずだ。
「俺の車、恭子のガソリンじゃねえと走らねえから」
真面目顔にそう言う奴も出てくるに違いない。
うん、これは決まりだな。
ー本日の結論:株価の下落は深田恭子をCEOにすれば防げるー
株で夢をかなえよう
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