配当金という言葉を聞くと、「セミリタイヤ」や「配当金生活」などの甘い響きのする言葉を連想する人が多い。
サラリーマンたちの多くは、憂鬱な月曜日の朝に「配当金」という甘美なワードを思い浮かべると、恍惚とした表情となり、もしかしたら自分はこのクソだるい永久ループから抜け出すことが出来るのではないかと、淡い希望を心の中に抱いてしまう。
しかし、実際のところ多くの人々は「労働」という永久ループから抜け出すことはできず、溜息をつきながら労働に勤しみ、白髪になり退職の時期を迎えた時点で、ようやく自分の行動の間違いに気付くことになる。
学生時代はあんなにユーモアに溢れていた深田さん(仮名)も、そんな労働者の一人だ。
今から皆さんにお話するこの物語は、もしかしたら心に大きな衝撃を与えてしまうかもしれない。
「こんなはずはない」
そう思う方もたくさんいらっしゃるだろう...。
しかし、今からお話する物語は、実はこの資本主義の真実を説明している。
多くの人にとっては目を背けたくなるような悲惨な物語かもしれないが、最後まで目を逸らさずに読み進めて欲しい。
「今日もまた残業か...」
新入社員の深田君は、今年の4月に営業部署に配置されたばかりの新入社員だ。
学生時代はイベントサークルでリーダーを務めていたこともあり、いつも明るくユーモアに富んだ若者なのだが、今の表情は暗い。
「深田ー、いつもの、いつものやってよー!!」
サークルの飲み会でそう言われると、
「ハアー、深田、深田、深田、きょうこおおおおおおおおおおお!!」
と叫んだ後に一気飲みをするのが深田君の得意技で、それをやるとサークルのメンバーはいつも大爆笑で、学生時代の深田君はみんなの人気者だった。
そんな深田君が深いため息をつき、ぼんやりとした表情をしている。
「おい、深田!!ぼうっとしているんじゃない!!早く会議の資料を作れ!!」
深田君の体がビクッと動く。
怒鳴ったのは、深田君の教育係の磯山課長だった。
入社以来、深田君はこの課長に厳しく指導されているのだが、磯山課長は典型的なパワハラ上司だった。
体育会系で人使いが荒く、様々な雑用を押し付けられる上に、営業成績が悪いと会議室で1時間以上も詰められる。
とにかくパワハラがひどく、学生時代はふっくらとしていた深田君なのだが、入社以来ずいぶんと痩せてしまった。
今日の朝依頼された会議の資料も、量が多くて残業しなければ作れるわけがない。
「また、今日も残業か...」
深田君は再び大きくため息をついた。最近は毎日朝7時に出勤して夜10時まで残業し、その後帰宅して寝るだけの日々が続いている。
頭痛もひどいし、たまに吐き気もする。
「もう、やめようかな...」
しかし、入社してすぐに買った車のローンがあるので、それを返済するまでは会社を辞めるわけにはいかない。
「深田、今週の土日は空けておけよ、ゴルフと接待があるからな!!」
課長のその言葉を聞いた瞬間、深田君の体が凍り付いた。今週は彼女の誕生日という大事なイベントがあるのだ。
「あの、すいません、今週は...」
「バカ野郎!!新入社員は率先してこういう仕事を引き受けるんだよ!!」
予定を言う前に磯山課長が大きな声でそう叫んだ。
そのため、結局、深田君は彼女との週末の予定を断らざるを得なくなった。
「もう、別れましょう」
電話の向こうで彼女がそう言った。何度も何度も仕事で約束を破る深田君に愛想をつかしてしまったのだ。
「ちょっと待っ...」
深田君が引き止める前に、彼女は電話を切ってしまった。
その後、彼女とは連絡が取れなくなってしまった。
「もう...ダメだ」
こうして深田君は最愛の彼女を失ってしまったのだが、それでも磯山課長のパワハラと激務は続き、日に日に深田君の精神は病んでいった。
そんなある日のことだった。
ーお身体大丈夫ですか?心配なので会いたいですー
後輩の株枕珍子からラインが届いた。
珍子は、大学時代にサークルの飲み会で酔った帰り道が一緒になり、ただ一度だけ肉体的な関係を持ったことのあるブスだった。おまけに性格も悪い。
彼女もいた深田君は、その後ずっと珍子から来るラインは無視していたのだが、なぜかこの時はこう返信していた。
ーいいよ、会おうかー
「なんでこんなに成績が落ちてるんだ!!」
田中部長にどやしつけられ、磯山課長はひたすら謝罪をした。
「申し訳ありません」
いくら頑張っても、すでに市場が飽和してしまっているため、自社製品の大幅なシェアアップは望めない。それでも、部長は成績が上がらないと毎日磯山課長を呼びつけ、怒鳴りつける。
会社が設定する目標は、なぜか常に非現実的に高く、とてもじゃないが達成できるわけがないのだ。
しかし、達成できないと毎日こうやって部長にどやしつけられる。
「隣の課の川村課長は頑張っているぞ」
おまけに、常に隣の課で働く一つ年下の川村課長と比較され、あまりに成績が悪いと飲み会の場でバカにされたりもする。
「おい、磯山、お前年次が下の川村課長に負けて悔しくはないのか!!」
部長にそう言われて、昔から営業成績優秀で鳴らした磯山課長のプライドはズタズタに傷つけられた。
ーもう嫌だー
本当はそう言って音を上げたいのだが、家族もマイホームのローンもあるので音を上げることはできない。
「あなた、家に帰ってきたら洗い物くらいしてくださいよ!!」
家に帰ると、ブクブクに太った嫁がいつもそう叫ぶ。
「一体、なんでこんなのと結婚したんだろうか?」
たまに、ふとそんな疑問が頭をよぎる。
若いころに仕事が辛かった時期に、ついつい優しくされた女性先輩社員を抱いてしまい、一撃で子供を作ってしまったのが失敗だった。
元々ブスだったが、ブクブクに太ってしまった今では抱く気も起きない。
「早く皿洗いしてちょうだい!!」
ヒステリックな声で叫ぶ嫁の声を聞き、磯山課長は軽い目まいを覚えた。
ーこんなはずじゃなかったー
洗面台の鏡で自分の顔を見るとひどくやつれていて、髪の毛はいつの間にか白髪でいっぱいになっていた。
ーこれは、俺か?ー
一瞬、磯山課長は鏡に映っているのが誰だかわからなかった。いつの間にか自分がひどく年を取ったことに気付き、呆然としてしまった。
「今期の営業成績をご報告いたします」
役員会議で営業成績を報告し、次期の目標を伝え終わると、田中部長はほっと胸をなでおろした。
部下たちを叱咤激励し続け、何とか今期は営業成績をプラスに持っていくことが出来たからだ。
経営陣も非常に喜び、社長にはこんなお褒めの言葉までいただいた。
「これで株主の皆さんにも喜んでいただけます。なんと言っても、今年、当社は配当性向を上げて株主還元を強化することを株主の皆さんとお約束しています。営業成績がプラスで売上高が確保できないと、株主の皆さんに配当金の増配をご報告することも出来ませんからね」
「ありがとうございます」
そう言いながらも田中部長は、「そりゃ、あんたは自社株をたくさん持っているから嬉しいでしょうに」、と心の中で毒づいた。
田中部長と磯山課長と深田君が働いている会社は、東証に上場する企業で、今年から株主への配当金の支払いを増額すると約束している。
そのため、磯山課長や深田君を必死に働かせ、まずは売上高を増やしていくことで利益を増やさなければならない。
そして、そうして生まれた利益の多くは、配当金としてその大部分が株主の懐へと還元される。
この会社の社長はオーナー一族出身者で、大量に自社の株式を保有しているため、会社の利益が増えれば増えるほど、懐に多額の配当金が転がり込んでくるのだ。
一方で、自社株を持っていない田中部長の懐には、配当金は1円も転がりこんでこない。
ー頑張っているのは自分たちなのに、なんだか面白くないなー
そう思った田中部長は、磯山課長に内線をした。
「おい、今晩は飲みにいくぞ」
今日は酒を飲んで磯山に自分の昔の武勇伝でも聞かせ、その後に説教でもしてやろう。
もちろん、費用は割り勘だ。
気晴らしの方法が思い浮かんだので、田中部長は気を取り直して仕事に取り掛かった。
「新入社員が有給なんて取れるわけがないだろうが!!」
そう叫んだのは、有給を取りたいと言い出した非常識な新入社員を叱りつけている深田課長だ。
最近の新入社員は、一丁前に有給は取りたがるし、土日の接待も断ろうとする。
俺が若かった頃は、そんなことは許されなかった。
深田課長は、前年に病気で亡くなった磯山課長の顔を思い出すたびにそう思う。
厳しい人だったが、同じ立場になって初めて磯山課長の気持ちが分かった。
ーあの人は、会社という組織のために、必死で頑張っていたんだー
「どうやって成績を上げていくんだよ!?抽象論じゃなくて現実的な計画を言ってみろよ!!」
深田課長がオフィス中に響き渡るような声で叫んでいると、デスクの内線が鳴った。
「深田、ちょっと来い」
白石部長からだった。
「また怒られるのか...」
最近は営業成績が芳しくなく、毎日部長に内線で呼びつけられて説教をくらってばっかりだ。
「だからさ、抽象的な言い訳はいいんだよ!!具体的にどうするのかを説明してみろよ!!」
体育会系の白石部長にどやしつけられたうえ、遅くまで残業した深田課長はフラフラになりながら帰宅した。
ーもう嫌だー
本当はそう言って音を上げたいのだが、家族もマイホームのローンもあるので音を上げることはできない。
「あなた、家に帰ってきたら洗い物くらいしてくださいよ!!」
家に帰ると、ブクブクに太った嫁がいつもそう叫ぶ。
「一体、なんでこんなのと結婚したんだろうか?」
たまに、ふとそんな疑問が頭をよぎる。
若いころに仕事が辛かった時期に、ついつい連絡をしてきた大学の頃の後輩を酔った勢いで抱いてしまい、一撃で子供を作ってしまったのが失敗だった。
元々ブスだったが、ブクブクに太ってしまった今では抱く気も起きない。
「早く皿洗いしてちょうだい!!」
ヒステリックな声で叫ぶ嫁の珍子の声を聞き、深田課長は軽い目まいを覚えた。
ーこんなはずじゃなかったー
洗面台の鏡で自分の顔を見るとひどくやつれていて、髪の毛はいつの間にか白髪でいっぱいになっていた。
ーこれは、俺か?ー
一瞬、深田課長は鏡に映っているのが誰だかわからなかった。いつの間にか自分がひどく年を取ったことに気付き、呆然としてしまった。
さて、いかがだっただろうか?
「こんなのひどすぎるよ!!」
そう思った方も多いかもしれないが、これは多くの企業で輪廻のように繰り返し起こっている事象だ。
おそらく、皆さんが属する組織でも同じようなことが繰り返し起こり、その結果として配当金が株主に届けられているのだ。
深田君や磯山課長は完全なる別人格を持った異なる人間たちだが、会社という組織で役割を与えられると、あとは株主に配当金を支払うために同じような人生を歩んでいくだけだ。
違いと言えば、嫁がカワイイかブスかくらいだろう。
つまりは、株式会社で働くということはこういうことなのだ。
このストーリーを読んでみて、感じられるところは人それぞれだと思う。
重要なのは、このストーリーを読んだ後に、どう考えて、どう行動するかということだ。
太字で書いた部分には、多くの歪んだ思考バイアスが含まれているので、お時間がある時に「どのようなバイアスがかかっているのか?」を考えてみるのも悪くはないだろう。
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