あれは...もう十年以上前のこと...。
そのころ、私は今と違って投資という概念も貯蓄という概念も持ち合わせてはおらず、ただひたすらに浪費街道を爆進しまくっていて、入ってきたお金はすべてキレイに使い切るという江戸っ子のような生活を送っていた。
「さ、今日も居酒屋で一杯やりますか」
「さ、今日も合コンで一杯やりますか」
「さ、今日も自分へのご褒美で一杯やりますか」
「さ、今日はミミちゃんと一杯やりますか」
そんな感じで、毎日のように酒を食らい、欲望を貪り、そして眠る、というまるで動物のような生活を送っていた。
恐らくは、任天堂の超人気ゲームである「あつまれ・どうぶつの森」に登場する動物たちの1/10くらいの理性しか、その頃の私は持ち合わせていなかっただろう。
ただひたすらに欲望に忠実に生き、貯蓄などは一切せず、むしろ月の収支が赤字になることもあった生活の中で、私の金銭感覚は完全にマヒしていた。
もちろん、ブランド物も買ったりしていて、全く似合わないヴィトンの財布を買ったり、2万円くらいするTシャツ(1日目で醤油をこぼして殉職)を買ったりと、本当に今考えると訳の分からない金の使い方をしていた。
多分、あの状態でギャンブルを頑張っていたら普通に自己破産していたかもしれない。
そんな欲望にまみれた生活を送っていたある日のこと、
「かぶまくら、スーツはいいの買った方がいいぞ」
意識高い系の先輩にそう言われた私は、その週の週末に百貨店に行き、高いスーツを買うことにした。
「すいません、スーツ欲しいんですが」
完全にネギを背負ったカモ状態で店内にヨチヨチ入ってきた私を見て、店員はにっこりとしながらこう言った。
「こちらの生地など如何でしょうか?」
その店で扱っているオーダースーツに使用する生地を触らせてもらうと、確かに触り心地がいい。
「じゃあ、これでお願いします」
「ありがとうございます」
「いくらですか?」
「20万円です」
「...」
結局、私はそのスーツを20万円支払って買うことにした。
もちろん、支払いはキャッシュカードで...。
そうして買った20万円の高級スーツが仕上り、それを着てみた感想は、
「確かに着心地はいい...」
さすがに20万円もするだけあって、スーツのズボンが肌に触れる際の感触が柔らかいような気がした。
そして、見た目もやはり抜群にいい。そのスーツには、見ただけで明らかに高いことが分かる独特の質感があった。
私は、有頂天になってそのスーツを頻繁に着るようになった。その頃、スーツは大体4着くらいでローテンションしていたのだが、その高級スーツを着る頻度が異常に増えていた。
「はは、僕は富裕層さ」
実際のところ富裕層は200万円くらいするスーツを着ているのだが、まだ若かった私は完全に有頂天になっていて、20万円のスーツを着ている自分は富裕層だと錯覚するくらいだった。
「このスーツ、20万円するんだ!!」
バカだったので同僚にそう自慢したりもしていたのだが、その20万円のスーツを着ていると得体の知れない自信が湧いてきて、それが上司や顧客にも伝わるのか、仕事も上手くいくことが多くなったような気がした。
しかし、とある時、私は気が付いた...。
「20万円のスーツが...ボロボロになってきている」
スーツを着ているサラリーマンなら分かると思うのだが、スーツは着続けるとだんだんとズボンの生地が薄くなったり、表面が傷んできたりする。
それは20万円のスーツでも例外ではなく、1年間くらいヘビーローテーションした結果、20万円の高級スーツがただのボロいスーツになり果てていた。
「ぼ、僕は富裕層...じゃないんだ」
その時、私は初めて自分は富裕層などではなく、貯金があと2000円しかない自己破産予備軍であることに気が付いてしまったのだ。
さて、かなり以前に20万円のスーツを買った事を思い出したので記事にしてみたのだが、クソ高いスーツを買ってみて分かったのが、「消耗品は安いものでいい」ということだ。
というのも、消耗品は書いて文字のごとく使うと消耗していくものなので、どれだけ高い商品であっても最後はただのゴミと化すからだ。
なので、仕事で着るのであれば2~3万円くらいの量販店で売っているスーツで十分なのだ。
消耗品であるスーツに高いお金を支払うのであれば、時計や電子デバイスなど、使用頻度が高くて使用期間が長く、耐久性のあるものを買った方がいいに決まっている。
例えば、iPhoneなんかはスマホの中でもクソ高い部類に入るのだが、それでも3年くらいは使用できるし、使用し終わった後も中古市場が確立しているので売却してお金に換えることも出来る。
また、あの頃は日経平均がまだ1万円付近の価格だったと記憶しているので、インデックスファンドを買っておけば20万円が倍以上になっていたはずだ。
そう考えると、やはり消耗品に高いお金を出すくらいであれば、耐用年数が長くて使用頻度が高いものに使った方が最終的なコスパは遥かにいいだろう。
そんな無駄遣いをせずに、投資をするのも有意義な選択肢の一つだ。
ただ、クソ高いスーツを買うことにも意外なメリットはある。
ここまで読むと20万円のスーツを買うことにメリットは全く無いように思えるかもしれないが、一つだけ、クソ高いスーツを着るメリットがある。
はっきり言って、1万円のスーツであろうが20万円のスーツであろうが衣服として持つ機能はほとんど変わらないのだが、見た目は圧倒的に20万円のスーツのほうがいい。
なので、20万円のスーツを着ると「おれは、おれは凄いビジネスマンなんだ」という謎の自信が湧いてくる。
自分に置き換えて想像してみて欲しいのだが、ボロボロの着古した服で鏡に映っている自分と、それなりにキチンとした身なりで鏡に映っている自分、一体どちらが自信ありげだろうか?
恐らくは、後者の方だという人がほとんどだと思うのだが、人間の見た目というのは本人が考えている以上に重要だ。
以前、「人は見た目が9割」という本が爆発的にヒットしていたが、あれは確かにその通りで、人の印象は見た目によってかなり左右される。
というのも、その人の人間性や性格、それから知能などは、深く関わらないと分からないケースが多いが、見た目は一瞬で分かるからだ。
なんなら、それでこちらの人間性や知能などがある程度相手の中で決まってしまうケースすらある。
なぜなら、人間が最も多くの情報を得る視覚は「人間性」や「知能」といった内面に隠れる特徴を感じ取ることは出来ないが、「見た目」はすぐに感知することが出来るからだ。
そのため、その人を印象付けるファーストインプレッションは服装などの外面で確定されることが多く、一番強烈なそのファーストインプレッションが「その人」そのものになってしまうこともある。
そう考えると、腕時計なんかと一緒で、相手の印象を操作するにはクソ高いスーツを着た方がよい効果を期待できるかもしれない。
また、「自信」が湧いてくるという点も見逃せないメリットの一つで、それだけクソ高いスーツを着ると自分のようなバカでも「僕って...もしかしてしゅごい?」と、謎に自信が湧いてくる。
「自信」が湧いてくるメリットは案外バカに出来ない。
・積極的になる
・堂々とした態度を取るようになる
・行動に迷いがなくなる
・生きてて気持ちいい
このように、自信があると行動がポジティブになるし、さらには生きてて普通に気持ちがいい。
生きてて気持ちがいい、という状態は結構重要で、例えば10億円は持っているが毎日資産が減ることを心配している大金持ちと、貯金は5万円だが毎日を楽しく過ごしているサラリーマンのどちらが幸せかと言ったら、相互に比較せずにその時の心理状態だけで考えるのであれば、恐らくは後者になるだろう。
つまりは、後者の方が「楽しい人生」を歩んでいる、ということになる。
お金を貯めたり増やしたりする目的は通常、「楽しい人生」を送るためであることが多く、誰も「苦しい人生」を送るためにそういった取り組みをしたりはしないだろう。
頑張った先に「楽しい人生」という報酬が待っていると思うから、節約したり投資をしたりしてお金を増やすことを頑張るのだ。
「自信」を持つと、お金を貯めたその先にある「楽しい人生」が即手に入るので、そういった意味では時間的にも経済的にも、クソ高いスーツはコスパがいい状態を作り出す可能性があると言えるかもしれない。
投資をやっていると節約や貯蓄に目がいきがちで、確かにそれは資産を築く上では正しい行動なのだが、やはりお金は使って初めて価値が生まれるものなので、この記事を読んでクソ高いスーツが欲しくなった方は、配当金を引き出したり株を売ったりして一度買ってみるのもいいかもしれない。
私は、今は毎日ZOZOスーツを着て出勤しているので、もうクソ高いスーツを買うことはないが...。
株で夢をかなえよう
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