ーピロリンー
朦朧とした意識のなか、私はスマートフォンからラインの着信音が鳴るのを聞いた。
時刻は深夜の3時。
私は、一刻者(芋焼酎)のストレートをあおるようにして飲んでいたのだが、気が付くともう深夜のそのような時間帯になっていた。
この区画でこの時刻に一刻者(芋焼酎)をストレートで飲んでいるのは、恐らくは私だけだろう。
日々の仕事によるストレスとコロナによる閉塞感のせいで、私は酒浸りの毎日を過ごしているのだ。
別に芋焼酎が好きなわけでもないのに、なぜか一刻者(芋焼酎)の720ml瓶を10本も買ってきて、休みの前の日などはひたすらストレートでやるのが習慣になってしまっている。
「さみしい、、さみしいよおお」
嫁もおらぬ、子供もおらぬ、彼女もおらぬリアル・アラフォーの私は、そうやって孤独を必死にまぎらわせるしかないのだ。
ー久しぶりー
「?」
深夜の3時という非常識な時間帯に送られてきたラインのトークを見て、私の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。
これは、、、誰だったっけ?
メッセージをスクロールして見ると、以前に少しラインでトークをしている。
ー寂しいからラインしてみた笑ー
さみ、、し、、い?
その瞬間、私の記憶が鮮明に蘇ってきた。
間違いない...。
こいつは...。
ー雌だー
あれは、昨年の夏のことだった。
私は、汗をかきながら遠方にある街を歩いていた。
その日は仕事の所要があったため、少し急いでいたのだが、正面から歩いてきたマスクを装着した雌猫の姿を見た瞬間、私はつい立ち止まってしまった。
も、萌え...。
萌えええええええええええええええええ!!!!
マスクを着けているのでハッキリと顔面を確認することはできなかったが、雰囲気でカワイイと判断。そして、なによりもショートカットで巨の乳。
「す、すいません」
気が付くと、反射的に話しかけていた。
「はい...」
「マスク似合ってますね!僕今日マスク買いにきたんですけど、黒か白どっちがおススメですか?」
「知らないです笑」
確かこのような流れで話しかけ、そしてラインを交換してバイバイした。
その後、はやる息子を制御することが出来ずラインを送ってみると、、
ーこんにちわ、おかげさまでマスク買えましたー
ーよかったですね~ー
このような感じでツレない感じの返信ばかりだったので、恐らくは彼氏がいるのだろうと考え放置していた。
そして数か月が経過した今、なぜか突然あちらからラインをしてきたのだ。
ーこんな夜中にどうしたの?※というか朝ー
ー彼氏と別れて寂しくてラインしちゃいましたー
おやおや...。
これは、どうやら...。
逃げた鳥が籠に戻ってきたようです。
雌猫...いや、猫美としておこう。
猫美からラインが送られてきた次の日の夜、今度は私の方から電話をして1時間半ほど話をした後、食事をする約束した。
私は基本的に電話はあまりしないのだが、初見のメスには頑張って電話をするようにしている。
というのも、チマチマとラインのトークだけするよりも、一度1時間くらいかけて電話をした方が「もうすでに一度食事に行っている」くらいの関係性を築くことが出来るからだ。
その際は、相手をお客様だと考え、可能な限り気持ちよく話をしていただくようにしている。
たとえ欠伸が出そうなくらい下らない話でも、電話口で頷きながら、誠心誠意聞いて相槌を打つ。
真面目なはなし、これくらいしないとアラフォーのオッサンが若いメスに気に入られるのは困難だろう。
「仕事毎日しんどい~、昨日仕事休んじゃった~」
「うんうん、大変だよね、でも猫美ちゃん頑張ってるから偉いよね!ポジティブやん!」
何がポジティブなのか分からなくてもポジティブだと言ってあげる。
アラフォーにはこれくらいの寛容さが必要なのだ。
ーそして食事当日ー
「おまたせ~!」
猫美は普通に30分ほど遅刻してきたのに、まったく謝ろうともせずそう言った。
「ぜんぜん大丈夫」
ここも大人の対応をする。
それにしても..やはり...この女...。
も、萌え...。
猫美はピッタリとしたニットを着てきており、圧倒的な巨の乳が強調されている。
だけど、まだ油断はならない。きちんとマスクをとっていただき、顔を確認してみるまでは油断大敵だ。
なぜなら...。
マスクを取ったらオランウータンみたいな顔をしている可能性もあるからだ。
「じゃあ、とりあえず行こうか」
居酒屋に入り、ビールが運ばれてくるとようやく猫美がマスクを外した。
これは...。
萌ええええええええええええええええ!!!
元カノの元祖猫美とは違い、猫美は普通に可愛かった。
実際に会って話をしてみると、猫美は非常に話が合う女だった。
私の精神年齢が5歳だということを差し引いても、10歳以上歳が離れているのにメチャクチャ話が合う。
男と女とはいっても、やはりそこは人間と人間なので、話が合うということは外見以上に重要だと私は考えている。
なので、食事を終えたあと、私は勇気をもって猫美にこう伝えた。
久しぶりに、心臓がバクバクしていた。
ちゃんと、言えるかな...言わなきゃ、伝えなきゃ。
不安だった。
だけど、勇気を出した。
萌えええええええええええええええええええ!!
萌えええええええええええええええええええ!!
萌えええええええええええええええええええ!!
私の魂の叫びに、猫美はコクンと恥ずかしそうにうなずいた。
そして、二人は、磁石のように惹かれあい...。
やがて朝が来て...。
ー悲しい、恋の物語が始まったー
つづく
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