ーShow me the moneyー
ジェレミーシーゲル著の名著、かつ米国株ブロガーの聖書として位置づけられている「株式投資の未来」に書かれているフレーズで、おいらが大好きな言葉だ。
ーShow me the moneyー
金を見せろ、金を配れ!!
株主のその要望に企業は渋々首を縦に振り、配当金を支払ってくれる。
シーゲル教授はその著書の中で、配当金を再投資することが、株式投資におけるリターンを最大化する最良の方法だと説いている。
米国株ブロガーの間でも、配当金は例に漏れず再投資されていることがほとんどで、実際おいらも日本株からの配当金は再投資に充てていた。
配当金から生まれるキャピタルゲインやインカムゲインはタダ同然なので、何もせずに資産がどんどん増えていく、まさに理論上は最強の投資方法だとも言える。
銀行預金の利子やクラウドファンディングの利子と、株式投資での配当金再投資の違いは、恐らく配当金が増配されていくということ以上に、キャピタルゲインが最大化出来るという点ではないかと思う。
銀行の定期預金やクラウドファンディングは利子を得ることが出来ても、元本が劇的に増えるということはない。
外貨預金の場合でも、20~50%も価値が上下することはあまりないし、あったとしてもかなり時間をかけてか、高金利の新興国通貨ペアの場合に限られる。
しかし、株式投資であれば運が良ければ1~2年で普通に元本が倍になったり、50%程度上昇することは結構ある。それとセットで下がる可能性もあるのだが。
したがって、元本から生み出された配当金を再投資すると、「元本+再投資金額」の評価額の上昇で爆発的な利益を投資家にもたらす可能性がある。もちろん、銘柄選択を間違えなければなのだが。
要するに、キャピタルゲイン、インカムゲインの最大化を追及するのであれば、配当金は絶対に再投資するべきなのである。
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「もしもし、久しぶり」
電話越しに久しぶりに聞く友人の声は、暗く沈んでいた。
彼は大学生時代の友人で、5年ほど前に結婚し、今は転勤でおいらとは少し離れた場所に住んでいる。
「今度、出張でそっちに行くんだけど、夜時間があったら久しぶりに会わないか?」
「ああ、いいよ」
随分と珍しいこともあるものだと思った。彼とは、彼が結婚してから1~2度くらいしか連絡を取ったことはなかった。
結婚式に行ったとき、嫁さんが綺麗な人だったので、嫉妬に狂いそうになったのを覚えている。
会うのは、結婚式以来だ。
「最近、嫁ともうまくいってなくてさ」
電話を切る直前、彼が少し沈んだ声でそう言っていたのが少し引っかかった。
ー数日後ー
おいらは彼と会う前に、少し準備をすることにした。
彼は非常に真面目な人間で、大学時代サークルで知り合ったのだが、きちんと講義にも出席していたし、ノートも取っていた。
一方で、おいらはほとんど授業には出席せず遊びまわっており、1回生のときの取得単位は一桁と驚異的な数値を記録していた。
もう少しで留年という危機が差し迫っていた時、彼のノートを借りて何とか助かったということがあった。
おいらがノートを貸してくれと厚かましいお願いをしても、何一つ嫌な顔をせずノートを貸してくれた彼には感謝の気持ちしかない。
恐らく、彼は今何か悩みを抱えているはずだ。
でなければ、いくら大学時代の友人とはいえ、高校時代ですでに飲む・打つ・買うの三種の神器を備えていたおいらのような、自分とは真逆の人間にわざわざ電話してくるはずがない。
おいらはSBI証券の口座にログインすると、証券口座へ入金されていた配当金のうち、3万円をそっとSBI住信ネット銀行の口座へと振り替えた。
そして、後日その3万円をATMから引き落として財布に入れた。
ー当日ー
「久しぶり」
居酒屋で乾杯をすると、まずは昔話に花が咲いた。久しぶりに会う昔の友人と酒を酌み交わすのは本当に楽しい。
サークルでの思い出話、昔の彼女の話題、他の友人の近況などなど。最近は仕事と全く関係の無い友人と酒を飲むことが滅多にないので、非常に楽しい気分になれた。
「ところで、最近は嫁さん抱いているのか?」
おいらが下劣な話題を切り出すと、突然彼の表情に影が差した。インテリ風の銀ブチ眼鏡の奥の瞳に悲しい光が宿ったのを、おいらは見逃さなかった。
「それが、最近うまくいってなくてさ」
「あんなに綺麗な嫁さんもらったのに?」
彼の話をよくよく聞いていくと、要するに最近彼は嫁さんとSEXレスになっており、それが原因でお互いの溝が深まっているということだった。
ライトハンドでのセルフフィニッシュを決めまくっているおいらからすれば、贅沢極まりない悩みだが、彼にとっては結構深刻な問題らしい。
「仕事が終わるのが遅くて、それに休日出勤なんかもあって、中々そんな気になれなくてさ。最初はあっちからも求められてたんだけど、それを断っているうちに段々と気まずい感じになってきちゃって」
ーこいつ、しばいたろかー
話を聞いているうちに、だんだんと腹が立ってきた。
おいらは例え深夜の2時に仕事が終わって、朝の4時に帰宅して、それから朝の7時に出勤だとしても、絶対にSEXを断ることなどない。そして、断る相手もいない。
「贅沢をぬかすな!!ライトハンドがAI化されることがどれだけ悲しいことか分かってるのか!!」
「ちがうんだよ、カブちゃん、結婚するとだんだんそんな感じじゃなくなってくるんだ」
彼が言うには、結婚当初はたしかに毎日そういう行為をしていたが、徐々に相手が家族という認識になってくると、そんな気分にもなれなくなってくるとのことだった。
そして、それが原因で最近は会話も少なくなり、家庭に非常に気まずい雰囲気がただよっているとのことだった。
彼ら夫婦にはまだ子供がいないので、この先もSEXレスの状態が続けば、離婚の危機にも発展するのではないかと悩んでいるらしい。
話を聞いていると、まあ確かにそうなのかもしれないと思った。そして、それは結構深刻な悩みであることも理解出来た。
男女の問題の大体はSEXで解決できるというのがおいらの認識で、それは昔の本やお話にもたびたび書かれている。
ほとんど会話の無い夫婦やカップルでも、しっかり夜の営みをしていれば関係は結構良好で長続きするのだが、それがない場合は、表面的に仲がよさそうでも破局や離婚となってしまうケースが結構あるそうだ。
人間も動物なので、一見知的で文明的な薄皮を被っていても、結局は本能に根ざした欲望に支配されて生きているということなのだろう。
キャバクラや風俗、そしてグラビアイドルやその他諸々の女性アイドルなどなど、そういう商売が成り立っていて、そこに金が流れているということ自体が、その証であるとおいらは思う。
人は、悲しい生き物なんだよ...。
「よし、次の店はおいらに任せてくれ」
そこで居酒屋を切り上げ、おいらたちは2軒目のお店に向かうことにした。
お会計は、全額おいらが支払った。
もちろん、支払いは全額SBIネット銀行から引き落とした配当金からだ。
結構飲んだので8,000円ほどのお会計だったが、まだ22,000円ほどが財布に残されていた。
ー2軒目ー
「お客様のご来店で~す」
激しいユーロビートが鳴り響く薄暗い店内に、2匹の動物が入店した。
熟考の末、おいらは彼を場末のセクキャバに連れていくことにした。
セクキャバとは、平たく言えば上半身裸の女が膝の上に乗ってくれている状態で酒が飲めるキャバクラの激しい版みたいなところだ(※上半身裸でない店もある)。
ちなみに、キスもおさわりもOKの店がほとんどだ。
「か、カブちゃん、僕、あんまりこういうところ行ったことがないんだよ」
「そうか、じゃあやめておくか?」
「...まあ、たまにはいいよね」
彼をコーティングしていた知的な薄皮がはがれ、欲望剥きだしの一匹の動物が中から現れた。
おいらたちは隣同士の席に案内され、それぞれ1名づつ女の子がつくことになった。
彼の席についた女の子を見ると、非常に若くて可愛い。彼もまんざらではなさそうな表情で会話を始めている。
そして、おいらの席にも、女の子がやってきた。
「おつかれさまで~す」
少し鼻にかかったようなハイトーンボイスが、期待を増長させた。
そのとき、おいらの高揚感はMAXへと差し掛かっていた。
「失礼しま~す」
女の子が横に座った。一体どんな子だろうか?
この瞬間が、いつも最高にワクワクする。
誰じゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
思わず、そう叫びそうになってしまった。
顔がパグのような女がおいらの横に配置された。速攻で店に苦情を入れようかと思ったが、隣の友人を見ると非常に楽しそうなので、何とか怒りをセーブすることにした。
まあいい、今日は彼に楽しんでもらえればいい。
しかし、今日、彼との約束を果たすことが出来るだろうか?
おいらの精神がそれに耐えられるだろか?
「上に乗っていい?」
「やめろ」
断る前に、パグがおいらの膝の上に乗っかってきた。顔が近い、近すぎる。ボクシングの試合前のフェイストゥフェイス並の至近距離だ。
ーやれんのかー
心の中に突如湧き上がってくる怯えを、必死に抑え込んだ。実はここに来る前、おいらは友人と一つ約束していた。
「いいか、セクキャバに行ったら、まずは担当の子としっかりイチャついて欲求不満の状態になれ。そして、そのあとおいらの方を見ろ。おいらの担当の子を自分の嫁さんだと思って見るんだ。そうすれば、それが疑似スワッピングとなって、奥さんへの欲望が回復するかもしれない。そして家に帰ったら速攻で嫁を抱くんだ」
「ありがとう、かぶちゃん」
男同士の固い約束だ。何があってもそれを破ることは許されない。
横を見ると...。
友人が女に貪りついていた。
彼はすでに知識階級という身分を捨て、動物的本能を解放し続ける野生階級の人間へと成り下がっていた。
あれも人、これも人。
日本を代表する作家、故山本周五郎の名作中の名作である赤ひげ診療譚の主人公であり、名医でもある赤ひげ先生の言葉を思い出した。
ーそれでいい、もっと楽しみなさいー
慈愛に満ちたまなざしで、彼が狂ったようにディープキスしているところを見ていると、ふと視線が合った。
ーかぶちゃん、まだ?ー
その瞳は、おいらにそう語り掛けていた。
いいだろう、おいらも男だ。約束は必ず守る。
そう思い、視線を真正面に戻す。
「舌激しく入れる派?」
「いや、僕は...」
ーかぶちゃん、早くしてよー
...。
う
う
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ー帰り道ー
「かぶちゃん、今日は本当にありがとう。しかも、全部出してもらっちゃったし...」
「いいんだよ、それよりも、帰ったら嫁のこと抱いてやれよ」
「うん、今日は何だか頑張れそうだよ」
彼の目を見ると、恐ろしいぐらい真赤に充血しており、すでにその思考が本能に支配されていることが理解出来た。
うん、大丈夫、これなら家に帰ってすぐに嫁を抱くだろう。
彼を駅まで送っていき、夜風に吹かれながら歩いていると、清々しい爽快感に身を包まれた。
一人の人間を笑顔にすることが出来た。
それだけで、今日という日が忘れがたい記念日になったのだ。
今日はサラダ記念日ならぬセクキャバ記念日だ。
幸福な気持ちで帰りの電車の切符を買おうと思い、財布から金を取り出そうとしたときだった。
「あれ、あれ???」
3万円の配当金はキレイさっぱりなくなっており、残り100円しか入っていなかった。
そして、残っていたのはパグの残り香だけだった。
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