「あっはあ...お金や、お金やああああああああ」
配当金が証券口座に振り込まれるたびに、不労所得を得る喜びに浸れるということは、投資家である諸君であれば誰もが首を縦に振って頷くことが出来るだろう。
特に、サラリーマン投資家を自分と同じようにやっている皆さんについては、普段血まみれになりながら給与所得という純労働所得を得ているので、配当金という何もしなくても振り込まれる所得が振り込まれると、ついつい興奮して冒頭の私のように雄たけびを上げてしまうはずだ。
というのも、人間はどれだけ恰好をつけていてもお金が大好きな生物で、この資本主義社会ではお金がないと何もすることができないからだ。
例えば、これまでに善行しか行ってこなかった聖人のような人間が無一文で牛丼屋に行き、「お金はありませんが、並、もらえますか?」といったならこのご時世警察を呼ばれてしまうかもしれない。
その一方で、たとえ極悪人であっても黙ってお金を出した場合は、店員がオペレーションに沿って作ったホカホカの牛丼が提供される。
このように、この資本主義社会では善悪関係なくお金さえあればある程度は何でも自分がやりたいことが出来る、というのがこの世のリアルなのだ。
だから、多くの人々がお金が欲しくてしょうがなく、それを手に入れる為に必死になっているのだ。
しかし、それで守銭奴になってしまっては本当に本末転倒だということに、多くの守銭奴予備軍たちは気が付いていない。
ところで、守銭奴の意味を知らないお子ちゃまたちに一応説明をしておくと、守銭奴とは「お金に異常に執着する人」「けちな人」といった意味で使われる言葉だ。
これはよくお金が好きな人、と混同されがちだがそれは少し違っていて、守銭奴はお金を使ってその価値を発揮させることにはまったく興味がなく、ただひたすらに「お金を貯める・増やすこと」だけに執着する人のことを指す。
お金という媒体は国家が価値を付けて発行している紙切れ(最近は紙切れでさえないケースもある)なのだが、それを使うことにより、例えば下記のような「価値」が得られる。
・家賃を支払う→居住空間が手に入る→価値=雨風をしのぐことが出来る
・牛丼代を払う→牛丼を食べることが出来る→価値=空腹が満たされる
・服を買う→皮膚を保護することが出来る→価値=快適に生活することが出来る
・コンサートチケットを買う→コンサートに参加出来る→価値=感動を得られる。
・本を買う→知識を得られる→価値:仕事や投資で成果が出る。
こんな感じで、お金を支払うと物や体験が得られ、その物や体験が「価値」を人々に提供してくれる。
これが、最もポピュラーなお金を保有するメリットだと言える。
しかし、リアル守銭奴になってしまうと、こういったお金の特性に見向きもしなくなり、「とある一面」だけに着目するようになる。
「お金が増えるのを見るのが楽しい」
これは、時代小説なんかに登場する守銭奴の商人の皆さまがよく吐かれるセリフなのだが、実際のところ、お金が増えるのを「数字」として見ていると得も言われぬ満足感が湧いてくる。
例えば、投資をしていて資産額が増えて悲しい投資家なんていないことからも解る通り、実際のところ「お金が増えるのを数字で見ると楽しい」のは事実で、これがお金が持つもう一つの特性だ。
そう、お金とは、ただ持っているだけで価値を発揮しているように人を錯覚させ、そして興奮させる魔力を持っているのだ。
しかし、その魔力に取りつかれてしまうと、一生お金の奴隷となってしまい、お金が持つ本来の機能を利用することもなく、ただお金を貯め続けるためだけの人生を送ることになってしまう。
もちろん、いつかはセミリタイアしたいから、など将来的に不労所得を得て、その不労所得で生活したいという目標が具体的かつ明確にあるのであれば話は別だ。
しかし、ただ数字を増やすことに執着してしまっている場合、その人はリアルに守銭奴予備軍になっている可能性があり、お金を増やしているはずなのにお金の奴隷として一生を終える可能性がある。
そうなってしまっては、「経験」の連続によって構成される人生が、必死でお金だけを追い回しているクソつまらないものになってしまう可能性が高い。
なので、もしも今この記事を読んでいるあなたが「俺...守銭奴予備軍になっているかも」と思ったならば、自分がたった一度の人生において体験してみたい「経験」は何かを今一度よく考えてみた方がいいかもしれない。
誰の人生においても、20代も30代も40代もたった一度しかなく、その時の感受性や感覚はたった一度のものだと考えると、その時にやりたいことにはある程度お金を使う意味はある。
死ぬときに一番後悔するのは、「やりたかったことをやって失敗したこと」よりも「やりたかったことをやらなかったこと」らしいからね。
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